解雇の金銭解決
Q. 日本は解雇規制が世界一厳しく、経営の構造改革を進めにくい……。日本経済停滞の一因とされてきた“日本の常識”に一石が投じられました。経済協力開発機構(OECD)の2019年調査による「雇用保護指標(EPL)」。正社員の個別解雇で37ヵ国のうち、規制の緩い方から12番目、集団解雇は7~8番目。独仏やスウェーデンより解雇はしやすい国という結果です。不当解雇の解決金も国際的にみて高くない、とか。解雇の金銭解決制度の議論も混線模様ですね。 |
A. 裁判で労働者の不当解雇が認められても、当人が同意すれば金銭の支払いで労働契約が解消される「解雇の金銭解決」制度厚労省の審議会で、法制化検討の議論が始まって10年が経過。今、足踏み状態になっています。2022年12月半ばの労働政策審議会・労働条件分科会。中立の立場で選ばれた公益委員の、具体的な議論に踏み込まないという事実上の先送り提案に、労使双方の委員も「異論なし」と応じたとされています。なんとも、現況を反映した象徴的な出来事でした。 |
◆「解雇の金銭解決」制度検討の経緯 労働契約法16条は、判例法理により生み出された解雇権濫用法理を明文化したもの。使用者が労働者を解雇し、労働者がこれを争う場合、労働者は、労働契約に基づく地位確認と、解雇後に支払われるべき賃金等の請求を裁判所に提訴するのが一般的。 ◆厚生労働省検討会の報告書 厚生労働省の「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」は、2022年4月に、解雇の金銭解決制度の報告書をまとめました。 ◆法制化議論が膠着状態となる理由 もともと労働者サイドには、解雇の金銭解決制度は、違法に解雇しても金さえ払えば解決できるとの安心感を使用者に与えるものであるという警戒感がある。つまり、使用者にリストラの大きな武器を与えかねないという懸念を強く抱いています。 |