HOME >これで解決!労働実務Q&A>パート・派遣・女性>雇用平等法制の現況サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

雇用平等法制の現況

Q.

 日本国憲法の人権カタログは、次のように分類できる。①包括的基本権(13条)、②法の下の平等(14条)、③自由権、④受益権、⑤参政権、⑥社会権、の6つです。このうち、①の包括的基本権と②平等権は、法秩序の基本原則であり、人権の総則的な権利である、との有力な見解があります。憲法14条で保障された法の下の平等を雇用の場で具体化したものが雇用平等法制。日本の雇用平等法制は、アメリカやヨーロッパと比べて、どのような特徴がありますか。

A.

 現在のアメリカとヨーロッパの共通の特徴は、人種、民族、宗教、性別、年齢等を事由とする雇用差別禁止法制が整備されていること。アメリカではこれに遺伝子情報が加わり、ヨーロッパでは性的指向が加わり、さらにパートタイム労働など雇用形態を理由とする不利益取扱いも禁止の対象とされています。これに対し、日本では雇用差別を包括的に禁止する法律は存在していません。個別の法律規定や時代の要請により散発的に定められた立法により規制されています。


◆わが国の雇用平等法制の特質

 日本の雇用平等法制とは、憲法14条の法の下の平等規定を頂点とし、雇用の場で具体化された個別の法律規定や立法による法体系の総体。このような平等法制の特質は何でしょう。
 第1は、多様なリーガルサンクション(法の強制方法)の採用。努力義務規定、不利益取扱いの禁止、強行規定、罰則規定など、法的拘束力が多様です。法の運用面で、白か黒かではなく、柔軟な働きが期待できる。
 第2は、ソフトローからハードローへ移行する事例が多いこと。最初は緩やかな努力義務規定から始まり、環境が整備されたり、気運が醸成された段階で、強行規定(差別禁止)化されることがあるのです。漸進的な政策実現をめざすポリシーのあらわれでしょう。憲法14条の差別禁止理由は、例示的列挙と解されています。よって、差別禁止理由は拡張が可能。情勢の変化に応じて機動性を発揮できるという利点があるのです。


◆わが国の雇用平等法制の概要

① 労働基準法 国籍、信条、社会的身分を理由とする労条件差別を禁止し(3条)、性別を理由とする差別については、賃金差別のみを禁止(4条)。違反すると、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金(119条1号)。最大のハードローである罰則付きです。
② 労働組合法 労働組合員に対する解雇その他の不利益取扱いを禁止(7条1号)。不当労働行為として、労働委員会による救済手続を定めているのが特徴です(27条)。
③ 男女雇用機会均等法 労働者の募集・採用(5条)、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨、定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別を禁止(6条)。実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある「間接差別」も、合理的理由がない限り禁止しています(7条)。女性労働者について、妊娠出産を理由とする不利益取扱いも禁止(9条)。改正により、徐々に法的拘束力が強化。
④ 労働施策総合推進法 頭初は、雇用対策法が改正され、労働者の募集採用の際に年齢条件を付けることを原則として禁止する規定が定められました。現在は、労働施策総合推進法と改称されています(9条)。
⑤ 障害者雇用促進改正法 障害者であることを理由とする雇用差別の禁止(34条、35条)。障害の特性に配慮した必要な措置を講じる事業主の義務を定める規定もあります(36条の2、36条の3)。
⑥ パートタイム・有期雇用労働法 正社員と非正規雇用労働者の賃金格差である“日本版”「同一労働同一賃金」を定めた法律。「不合理な待遇差の禁止」[均衡待遇のルール〕(8条)と、「差別的取扱いの禁止」〔均等待遇のルール〕(9条)を規定。判断基準が明確化されました。事業主の説明義務(14条3項)も。
⑦ 労働者派遣法 派遣先均等・均衡方式(30条の3)と、労使協定方式(30条の4)により、パートタイム有期雇用労働法と同趣旨の規定が定められました。

ページトップ