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労働実務Q&Aこれで解決!

介護離職問題

Q.

 高齢化の進展に伴い、仕事をしながら親や配偶者ら身内を介護する人が増えています。総務省の「就業構造基本調査」によると、2022年で介護をしている人は約629万人。そのうち仕事を持つ人が365万人と、約6割。家族の介護や看護のため、仕事を続けられず、離職を余儀なくされる「介護離職」。昨年、10万6000人と再び増加に転じたとか。国は、2015年に介護離職ゼロの目標を掲げていましたが、その目標が遠のいています。課題と対策をご教示ください。

A.

 介護離職を防ぐために、国が設けてきたのが、育児・介護休業法にもとづく両立支援制度。この利用が十分に進んでいないことが課題です。利用が進んでいない理由を探っていくと、「勤務先に制度が整備されていない」が最も多く、正規労働者の43%、非正規労働者の37%でした。人口が減少する日本において、介護離職は、貴重な労働力を失う大きな損失。支援制度の利用を広げ、必要な介護サービスを確保し、介護と仕事を両立することができるようにすることが、国と企業に求められています。


◆介護離職の利点と注意点

 会社を辞めると、「介護に集中できる」とか「外部に頼っていた介護を自分でするので介護費用を減らせる」という利点がある。
 一方で、次のような注意点があります。①給料など安定した収入が途絶え、老後資金をためるのが難しくなる。②厚生年金から脱退するので、将来の公的年金が少なくなる。③離職期間が長びけば、再就職で希望する仕事や収入を得るのが困難になる。④介護こそがその人の生きがいになり、親をみとった後、働く気力を失って困窮したり、自殺する人も。
 生命保険文化センターの21年度調査によると、介護の期間の平均は5年1ヵ月。1人で頑張るというスタイルは長続きしません。
 地域包括支援センターなどを活用し、介護サービスをつかって、持続可能な介護をめざすべきです。
 介護離職は極力避けるべきではないでしょうか。介護には、介護する人の精神的・金銭的余裕が必要です。


◆仕事と介護の両立支援制度

 介護離職の防止を目的とした唯一の法律が、育児・介護休業法。育児・介護休業法で定めている仕事と介護の両立支援制度を知ることが大切です。
 まずは、介護休業。要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業を取得することができる。原則無給。ただし、雇用保険の被保険者であれば、雇用保険から従前賃金の67%の介護休業給付金が支給される。
 つぎに、介護休暇。年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで、1日または時間単位で取得できる。原則無給。
 さらには、所定外労働の制限。介護が終了するまで、残業免除を請求することができる。
 くわえて、所定労働時間短縮等の措置。企業は、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差出勤の制度、介護費用の助成措置のいずれかの措置の導入義務あり。


◆制度の周知と介護サービスの充実を図る

 国の調査研究事業によると、支援制度の利用が進まない理由として、最も多かったのが、「勤務先に制度が整備されていない」という回答。しかし、仕事と介護の両立支援制度は、国が法律で定めた制度。労働者の権利であり、要件を満たせば、どの企業に勤めていても利用ができます。
 国は、「法律で定められた権利」であることを国民に周知していく必要があります。企業も、早急に、就業規則に定めることが要請されます。
 離職の理由として、「介護保険サービスを利用できなかった」等を挙げた人も3割以上。特別養護老人ホームなどの施設に家族を入居させたいが空きがない、あるいは、介護職員の不足で、訪問介護などのサービスを十分に利用できない等の事情も。介護離職を防止するためには、介護サービスの受け皿を整備し、介護職員等の要員を確保して、十分な介護サービスを提供していくことも不可欠です。

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