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労働実務Q&Aこれで解決!

労働法の基本原理と体系

Q.

 憲法、民法、刑法など、どんな法律にも、その核心的な価値ともいうべき基本原理があります。また、各法律を構成する特有の法体系というものもある。法律の全体像を把握することにより、各制度や条文がその法律の中でどのような位置づけにあり、他の制度との相互の関連性を知ることができます。一方、「労働法」という法律はありません。数々の法律の総称です。労働法の基本原理は何ですか。労働法の体系は、どのように捉えるのがよいですか。

A.

 労働法の基本原理は、労働基本権(広義)にあると考えます。労働基本権は、従来の自由権的基本権に対して、生存権理念(憲法25条)を基礎とする社会的基本権に位置づけられる重要な人権。わが国の憲法では、27条および28条で保障されています。労働法の領域は、次の4つの分類がわかりやすいでしょう。①個別的労働関係法、②集団的労働関係法、③労働市場法、④労働紛争解決法、です。この冒頭に、労働法の基本原理を含む総論を置く。そうすると、全部で5つの体系になります。


◆労働法の基本原理

 憲法27条1項は、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」とし、つづいて2項は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律で定める」と規定。3項では「児童は、これを酷使してはならない」と定めています。
 2項は、地味ですが、画期的な規定。なぜなら、契約自由の原則という市民法の根本原理を修正し、勤労条件の決定については法律で定めるとしているから。労使の契約内容に、国が直接介入するとしているのです。
 憲法28条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」としています。
 具体的には、団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権)をいい、あわせて労働三権または労働基本権(狭義)といいます。これにより、労使間の法的関係の実質的平等を実現しようという趣旨の規定です。


◆労働法の体系

(1)総論―労働法の全体像や基本原理、基本的な枠組みなどを知る序論・導入部分。
 労働法の沿革、基本原理、労働法上の当事者(労働者、労働組合、使用者の概念)、労働法の法源(強行法規、労働協約、就業規則、労働契約による規律)などが、主たる内容。
(2)個別的労働関係法ー労働者と使用者の個別の関係を規律する法分野。
 法律としては、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法、労働契約法があります。
 もちろん、労働基準法と労働契約法が基幹となる法律です。とりわけ、労働基準法と労働契約法の「棲み分け」が大事。労働基準法は、労働条件の最低基準を法律で強制。罰則付きの公法的取締法と民事的強行法規が特徴。労働契約法は、労働契約の権利義務のルールを定めたもの。民事上の紛争解決をサポート。刑罰や行政的取り締まりになじまないエリアです。
(3)集団的労働関係法ー労働者、使用者と労働組合との集団的な関係を規律する法。
 労働組合法と労働関係調整法があります。かつて、労働基準法、労働組合法、労働関係調整法を労働三法と呼んでいました。しかし今日では、労働組合が争議行為に訴えることは稀。よって、労働関係調整法の役割も低減しました。労働組合法では、労働協約と不当労働行為の救済が労働者にとって有用です。
(4)労働市場法ー求職者(労働者)と求人者(使用者)との労働取引に関する法分野。
 雇用仲介事業の規制(職業安定法、労働者派遣法)と、雇用を促進・援助するための法政策(労働施策総合推進法、雇用保険法、職業能力開発促進法)に二分されます。
(5)労働紛争解決法ー労働関係をめぐる紛争を解決するための法。
 個別労働関係紛争解決促進法(2001年)と、労働審判法(2004年)があります。前者は、職場の個別紛争(賃金不払い、いじめ、セクハラ、解雇等)の裁判所外での解決の仕組み。後者は、地方裁判所に労働審判を司る機能を付与したものです。

 

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