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労働実務Q&Aこれで解決!

最低賃金制度

Q.

 2023年度の最低賃金は、全国平均(加重平均)で時給1,004円と初めて1,000円を超えたそうです。過去10年の引き上げ率を比べてみると、島根県(36.1%)や鳥取県(35.5%)など地方で大きく、東京都(28.1%)など都市部を上回っているとか。物価の高い都市部ほど最低賃金も高くなる傾向がある一方で、地方ほど上げ幅が多いようです。多くの小売店や飲食店が賃上げを迫られるため、物価上昇の懸念も。値上げの難しい中小企業の経営悪化が心配です。

A.

 岸田首相は、昨年8月、最低賃金について「2030年代半ばまでに全国平均が1,500円となることをめざす」と表明しました。継続的な賃上げを実現し、デフレからの完全脱却と経済成長を実現するねらいがあるようです。先進国の中で日本の最低賃金は高いとはいえず、韓国の水準より下回っています。1990年代以降の経済の低迷が響いているのです。最低賃金の引き上げは、多額の財政出動なしに有権者の恩恵を訴えやすいため、世界的に人気のある政策。ちなみに山口県の最低賃金は、928円です。


◆最低賃金制度とは

 賃金の最低基準については、「最低賃金法」において最低賃金制度が設けられています。最低賃金制度とは、国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度のこと。
 賃金額の決定については、本来当事者である労使の自由な交渉で決めるのが原則(契約の自由)ですが、労働者を保護するため、国が市民法原理に法的制約を加えているのです。
 最低賃金に達しない賃金の定めをしても、その部分は私法上無効であり、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます(最低賃金法4条2項)。そのため、最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わねばなりません。最低賃金に違反した使用者は、50万円以下の罰金に処せられます(同法40条)。


◆最低賃金の種類と決定方法

 最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類があります。
 地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される最低賃金。47都道府県に1つずつ定められます。
 どうやって決まるのでしょうか。政府と都道府県の2段階で決まります。まず毎年夏、学識経験者と労使代表からなる国の審議会が目安額を提示。これを踏まえ、各都道府県の審議会が実際の金額を答申。審議会では、地域ごとの生計費や賃金の動向、事業者の支払い能力などをもとに金額を話し合います。労使からの異議申し立て手続きを経て、都道府県労働局長が決定。改定額は10月頃順次発効します。
 特定最低賃金は、都道府県ごとに、特定の産業について設定されている最低賃金です。
 地域別最低賃金と特定最低賃金が同時に適用される場合には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わねばなりません。


◆適用される労働者・対象となる賃金

 最低賃金は、原則として事業場で働く常用、臨時、パート、アルバイト等の雇用形態や呼称の如何を問わず、すべての労働者に適用されます。ただし、次の労働者については、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に減額の特例が認められます。①精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者、②試の使用期間中の者、③認定職業訓練を受ける者のうち一定の者、④軽易な業務に従事する者、⑤断続的労働に従事する者。
 最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。ただし、次の賃金は除外します。①臨時に支払われる賃金、②1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金、③時間外勤務手当、④休日出勤手当、⑤深夜勤務手当、⑥精皆勤手当、通勤手当、家族手当。

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