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労働実務Q&Aこれで解決!

産前産後休業と育児休業

Q.

 かつて、女性の妊娠・出産を理由とする不利益取扱いや職場での嫌がらせは、よく行われていました。「迷惑」、「辞めたら?」は序の口。賞与の不利益算定、非正規への転換強要、減給、降格、はては雇止め、解雇など…。今日では、マタニティハラスメントとして固く禁じられているのは、ご承知のとおり。わけても、育児休業については、育児・介護休業法として急速に発展・拡充をしています。まさに、「隔世の感」あり。現状はどうなっていますか。

A.

 2022(令和4)年4月より、事業主は、つぎのような措置義務を負っています。労働者が本人または配信者の妊娠・出産を申し出た場合、申し出を行った労働者に対し、育児休業制度を周知させ、意向確認のための面談を行わなければなりません。また、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備のため、研修実施などの措置をとることも義務化。さらに、常時雇用する労働者1,001人以上の企業に対しては、毎年1回、男性の育児休業等の取得率を公表することを義務付けしました。


◆産前産後休業と育児時間

 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合、就業させてはならない(労基法65条1項)。つまり、本人の請求が要件です。
 これに対し、産後8週間を経過しない女性は就業させてはなりません。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、医師が支障ないと認めた業務に就かせることはできる(同条2項)。産後の6週間は、強制的休業です。
 産前産後休業を有給とすることを労基法は求めていないため、無給でも差し支えありません。ただし、健康保険により、産前42日(多胎妊娠の場合98日)から産後56日までの間、労務に服さなかった期間について、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が「出産手当金」として支給されます(健保法102条、138条)。届出により、労使ともに社会保険料も免除されます。
 産前産後休業を請求・取得したことを理由とする解雇・不利益取扱いは、男女雇用機会均等法によって禁止(9条3項)。この規定は強行規定であるため、法律行為であれば無効とされ、不法行為(民法709条)としての違法性を生じさせることになります。
 1歳未満の子どもを育てる女性は、法定の休憩時間のほか、1日2回、それぞれ少なくとも30分の育児時間を請求することができます(労基法67条1項)。


◆育児休業制度

 産前産後の休業期間経過後は、育児休業制度があります。小さい子どもを養育する労働者の職業生活と家庭生活の両立を支援するために、休業や時間外労働の制限などについて定めているのが育児休業制度です(法律は「育児・介護休業法」)。対象となるのは、女性労働者に限らず、男性労働者も適用を受けます。
 育児休業は、原則として労働者が1歳に満たない子を養育するための(一定の事情があれば1歳6ヵ月または2歳まで延長可)休業です。労働者は、子1人につき原則として2回まで、分割してとることができます。
 育児休業中の賃金保障は法定されておらず、合意がなければ無給。ただし、雇用保険から育児休業開始後180日間は休業前賃金の67%、その後は50%が「育児休業給付金」として支給されます(雇保法61条の7第6項)。育児休業期間中、社会保険関係は継続されるものの、保険料は免除されます(健保法159条、厚年法81条の2)。
 男性の育児休業取得促進のため、一般の育児休業とは別枠で、子の出生直後の時期に、新制度(いわゆる「産後パパ育休」制度)が創設されました(2022年10月1日施行)。
 すなわち、子の出生後8週間(母の産休期間)以内に、4週間まで、分割して2回取得が可能です。賃金保障は義務づけられていません。ただし、雇用保険から休業前の賃金の67%が「出生時育児休業給付金」として支給されます(雇保法61条の8)。

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