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未払賃金の立替払制度

Q.

 勤務先の会社が、給料日に給料全額を支払ってくれず、遅配になっています。給料の遅配は、会社の資金繰りが困難となっている証しであり、倒産の前兆。従業員を路頭に迷わせるようなことはしない、との社長の言葉を信じてきたのに⋯。定年退職を目前にして、再就職も難しく、不安を感じる毎日です。会社が給料を支払えないときに、国が立替払いをしてくれる制度があるそうですが、誰でも利用できますか。どのような仕組みになっているのでしょうか。

A.

 未払賃金立替払制度は、企業の倒産により定期賃金や退職金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対して、国が未払賃金の一部を立替払いする制度。未払賃金の立替払いの受給者は毎年2万~3万人にのぼっており、倒産時の労働者に対するセーフティネットとして、重要な役割を果たしています。この制度は、第1次オイルショックによる不況を背景に、企業倒産および賃金不払事案が増加したことに対応するため創設されたもの。「賃金の支払の確保等に関する法律」を根拠法として、1976(昭和51)年7月1日から実施されています。


◆立替払いの要件

 未払賃金の立替払いを受けるためには、事業主および労働者のそれぞれについて、つぎのような要件が必要です。


[事業主にかかる要件]

  1. 労災保険が適用される事業主であって、1年以上の期間事業を行っていること。
  2. 法律上の倒産、または中小企業であって事実上の倒産をし労働基準監督署長の認定を受けること。

 法律上の倒産とは、破産手続開始の決定(破産法)、特別清算手続開始の命令(会社法)、再生手続開始の決定(民事再生法)、更生手統開始の決定(会社更生法)をいいます。
 中小企業のみに認められる事実上の倒産とは、その事業活動が停止し、再開の見込みがなく、かつ賃金支払能力がないことが労働基準監督署長によって認定されたことをいいます。


[労働者にかかる要件]

  1. 事業主が倒産する日の6ヵ月前の日以降2年間に退職して、賃金や退職金を支払われなかったこと。
  2. 破産手続開始の決定等または事実上の倒産の認定の日の翌日から2年内に、立替払請求をすること。

 未払賃金立替払請求には、上記の各要件に該当することについて「裁判所等の証明書(破産管財人等の証明書)」または「労働基準監署長の確認通知書」を添付しなければなりません。


◆立替払いの対象となる賃金

 立替払いの対象となる賃金は、退職日の6ヵ月前の日以後立替払いの請求日の前日までの期間において支払期日が到来している定期給与(ボーナスは含まず)および退職金であって、その総額が2万円以上のものです。
 実際に立替払いが行われる賃金の額は、全額ではなく、未払い分の80%相当額。
 未払賃金総額については、退職日の年齢により、上限額が定められています。30歳未満の者は110万円、30歳以上45歳未満の者は220万円、45歳以上の者は370万円です。


◆実施機関と立替払いの原資

 この制度は国の制度ですが、立替払いの実施業務は、独立行政法人労働者健康安全機構によって行われています。
 機構においては、「破産管財人等の証明」または「労働基準監署長の確認」を添付した立替払請求書の提出を受けて、立替払いの各要件や未払賃金額について審査を行ったうえで、立替払いの支給を決定し、請求者に支払います。
 未払い賃金立替金は、どのような原資から出ているのでしょうか。未払賃金の立替払制度は、労災保険事業である社会復帰促進等事業の1つとして行われ、立替払いの費用は全額事業主の負担である労災保険料によって賄われています。

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