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労働実務Q&Aこれで解決!

就業規則の効力発生時期

Q.

このたび就業規則を改定し、遅刻・早退を理由とする解雇の条件を、社員にとって厳しいものに変えました。社員には改定した旨を伝えたのみで内容は公表せず、労働基準監督署にも届出ておりません。それ以後該当者が出ましたので新規定を適用したいのですが、できるでしょうか。

A.

労働基準法は、就業規則を作成・変更した場合に、罰則の適用を伴ったいくつかの手続的規制を加えています。そのプロセスの中での効力発生時期については、労働者に内容を周知せしめた時と解すべきです。したがって周知されていない就業規則は効力を発生していません。


◆就業規則の作成・変更の手順

 就業規則は、事業経営の必要から使用者が定めた統一的職場規範であり、職場規律や労働条件を内容とする「職場の憲法」です。しかも、労働契約や労働協約と異なり、使用者が一方的に制定・変更できることになっています。そこで労働者保護のための法規則が必要になるのです。
 労働基準法は、就業規則を作成・変更した場合に、1.労働者代表の意見を聴取すること(90条)、2.労働基準監督署長へ届出ること(89条)、3.労働者へ周知させること(106条)、の3つの手続きをとることを定めています。
 これらの段落のなかで、いつの時点で就業規則としての効力を発生するか、が問われているのです。


◆意見聴取・監督署長への届出



 使用者が就業規則を作成または変更するときには、「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者」の意見を聞かなければなりません(労基法90条1項)。この意見聴取は労働者の意見を反映させる機会をつくるもので、労働者代表の同意を得ることまで要求しているものではありません。
 また、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」は、労働者代表の意見聴取義務に加えて、その就業規則を所轄の労働基準監督署長に届出ることが必要です(労基法89条1項、労基則49条1項)。就業規則の内容について労働保護法規に違反していないかチェックするためです。
 届出に伴って「意見書」の添付が必要ですが、たとえ「反対」の意見であっても就業規則の効力には影響なく、受理されることになっています。
 このように、労働者代表の意見聴取や労働基準監督署への届出は、使用者に手続上の履践義務を課すものであって(違反は労基法上の罰則の適用を受けるが)、これを欠くからといって民事上も効力を有しないというものではありません。


◆労働者への周知義務

 これに対し、労働者に全く周知されていない就業規則の効力はどう考えるべきなのでしょうか。
 それは使用者が作った単なる内部文書であって、労働者を拘束する就業規則としての効力を有していないというべきです。就業規則の効力は労働契約に優先し(労基法93条)、就業規則の周知義務は、就業規則の作成・届出を課されていないすべての使用者に及ぶものです(同法106条)。客観的な職場規範たらしめるための前提条件を欠いていると言わざるを得ません。
 就業規則は、何らかの方法で労働者に周知されているかぎり、労使間では有効で、あとは労基法106条に定める「周知手続」違反となるにとどまるのです。

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