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労働実務Q&Aこれで解決!

労働分配率

Q.

会社で稼いだ儲けは、なるべく従業員に還元することを会社設立以来のモットーにし、決算賞与などもできるだけ出してきました。ただ、付加価値に占める人件費の割合である労働分配率は低い方がよい、ということも聞きます。経営者としては、どのように考えればいいのでしょうか。

A.

企業経営にとって、付加価値の分配をどう考えるかは極めて重要。付加価値創出に貢献したのは資本と人間ですから、配分もそのバランスが大事なのです。会社の存続と発展のためには労働分配率を低く抑え、自前のカネとなる内部留保の蓄積に努めるのが最も賢明な選択です。


◆付加価値経営をめざす

 すべての企業は、新たな経済価値である付加価値をつくっています。モノだけでなく、サービスや情報、あるいは便利さや満足感など、人が価値と認めるものにはお金が払われ、それが付加価値創造につながるのです。企業はこれらを“ビジネスチャンス”と捉えて、企業活動を展開し、他方、付加価値を生まない企業は社会から淘汰されていく運命にあるのです。企業はより大きな付加価値を効率よくつくり、社会を豊かにより快適にする、という社会的使命を担った組織なのです。
 ここでいう付加価値とは粗利とか加工高といわれているもので、売上高から材料費や外注費を差し引いたものをいいます。厳密には、人件費、課税前利益、金融費用、賃借料、公租公課、これらに減価償却費を加えたものをいいます。
 付加価値を考えるときに大切なことは、だれが付加価値を活用し、誰が付加価値の大きさを決めているのかということです。
 結論からいうと、ユーザー、すなわち消費者が買ってくれてはじめて付加価値は生まれます。買われることによってはじめて付加価値となり得るのです。その付加価値の大きさを決めるのも、消費者。まさに、需要者側が企業の命運を握っているのです。
 CS(顧客満足)があらゆる企業の重要テーマとなるゆえんがここにあります。またモノやサービスはあふれていますから、経営者は、顧客の創造、市場の創造のために知恵を働かせて、売れる仕組みをつくる必要があるのです。


◆労働分配率と企業の存続・発展

 獲得された付加価値を人間と資本へどう分配するか(それぞれ労働分配率、資本分配率という)が次の課題です。とりわけ人件費は、付加価値に占めるウェートが大きいので、適正なマネジメントが求められます。
 いえることは、労働分配率の低い企業の方が成長・発展のスパイラルの循環に乗れる傾向があり、労働分配率の高い企業は逆に衰退の道をたどる傾向があるということです。労働分配率が高いと、課税前利益が圧迫され、結果的に内部留保額が少なくなります。そうすると設備投資に際して金融費用や賃借料がかさみ、利益が出なくなる借金依存体質になってくるのです。内部保留は金利も配当も必要のない、企業が自由に使えるお金であり、この大きさが企業の強靭さを表わしています。付加価値を永続的に生み出すためには、資本を拡大する源泉としての利益が必要なのです。
 企業の利益は、将来のリスクに備える保険、あるいは企業存続のための維持費(コスト)。企業の利益が従業員の将来の生活を保障し、長い目でみれば雇用の確保に資するのです。
 経営者は、「大善を為す」勇気をもって、不況下でも業績を上げられる増益企業にしましょう。そのために、労働分配率50%以下を目指すべきです。利益を上げるためには、従業員に期待する役割を示し、成果を上げることに挑戦できる人事システムを構築せねばならないのです。

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