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労働実務Q&Aこれで解決!

試用期間と本採用拒否

Q.

試用期間中の社員の本採用を拒否する場合に、具体的判断基準や手続上の留意点があれば教えて下さい。

A.

試用期間中または試用期間満了時の本採用の拒否は、法律上は、解雇に該当します。雇入れ後の通常の解雇より広い範囲で解雇の自由が認められていますが、解雇するだけの客観的かつ合理的な理由が必要です。


◆試用期間とは

 多くの企業では、正規従業員を採用する場合、入社後の一定期間職場で働かせ、その者の適格性を判定するための試みの期間を設けています。期間は1ヶ月から6ヶ月にわたる期間が就業規則に明定され、3ヶ月程度に定めている例が多いようです。
 試用期間の法的性格をどう捉えるかについては、種々の法的構成が提唱されましたが、判例は、かねてより長期雇用システムにおける通常の試用期間は、使用者の解約権が留保された労働契約であるとする解約権留保付労働契約と解しています(最判48・12・12「三菱樹脂事件」)。したがって、試用契約期間も当初から期間の定めのない通常の労働契約であり、ただ試用期間中は使用者には労働者の不適格性を理由とする解約権が大幅に留保されている、と考えるのです。


◆適格性の判断基準

 試用期間中の解雇や本採用拒否は留保された解約権の行使となるわけですが、解約権がいかなる場合に行使できるかが問題となります。
 前記の判例は、試用期間中の解約権の留保の趣旨を、採用決定の当初にはその者の資質・性格・能力などの適格性の有無に関連する事項につき資料を十分に収集することができないため、後日における調査や観察にもとづく最終的決定を留保するためと把握しています。その上で、このような留保解約権に基づく解雇は通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められてしかるべきと判示しているのです。
 ただし、留保解約権の行使も、「解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」という歯止めもかけています。
 この判例では、「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合」に解約権を行使できるとしています。
 仕事をする上での実務スキルはもとより、従業員の意欲・態度など人柄やメンタリティが企業ニーズに合致しているかどうかも重要な判断材料となりますので、社内に適格性を判断するための具体的基準を設けておくのがベターといえます。


◆不採用の意思表示

 試用期間は、解約権留保付きの本採用契約ですから、試用期間到達時に使用者から何らの意思表示がないときは、自動的に本採用となります。
 ですから、社員として不適格なときは、「本採用しない」という意思表示が必要です。期限到達時にするのが普通ですが、期間の中途でもできます。ただし、14日を超えて使用している場合には、試用期間中の長さとは関係なく、解雇予告の手続が要件となります(労基法20条、21条但書)。

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