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労働実務Q&Aこれで解決!

ダラダラ残業

Q.

規制緩和の影響もあって会社全体の仕事量が増えてきてはいるのですが、事務担当の数名の残業時間が極端に長くなってきました。示し合わせて、残業代稼ぎのために意図的にダラダラと残業をしているとしか思えません。このような場合でも残業代を支払わなくてはいけないのですか。何か有効な手だてがあれば教えて下さい。

A.

実際に時間どおり残業しているのであれば法定の残業代を支払わなくてはなりません。ただし、残業は労働時間のなかでは例外的事項であり、上司の残業命令があることが前提です。自主申告による事後承諾制をとっていると推察されますが、残業が必要なときは事前に上司に申し出て、許可もしくは承認を得るような制度に変えた方がいいでしょう。抜本的には、仕事を通じた成果や会社への貢献度を評価して処遇する人事システムを構築することです。


◆残業命令の法的根拠

 多くの企業では、就業規則で、「業務上必要あるときは、三六協定の範囲内で、時間外・休日労働を命じることがある」旨の規定を設けています。就業規則は個々の労働契約より優先的効力がありますから(労基法93条)、就業規則が労働契約の内容となり、労働者は会社の代理人である上司の残業命令に従う義務が生ずるのです。
 判例も、日立製作所事件で、「使用者が当該事業場に適用される就業規則に当該三六協定の範囲内で一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間を延長して労働者を労働させることができる旨定めているときは、当該就業規則の規定内容が合理的なものである限り、それが具体的な労働契約の内容をなすから、右就業規則の規定の適用を受ける労働者は、その定めるところに従い、労働契約に定める労働時間を超えて労働する義務を負う(最判平3・11・28)」と述べています。
 逆にいえば、上司の残業命令によらない労働は、本来、時間外労働とはならないのです。ただし、残業をしていることを知りながらこれに異議を唱えなかったときは、黙示の承認があったと考えるのが通常です。
 労基法は、使用者が、「労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその労働については」2割5分以上の所定の割増賃金を支払わなければならないと定めています(37条1項)。つまり、労働の質や内容を問うことなく、労働時間を唯一のモノサシとしているのです。法律上は、残業をした場合、一分たりともカットすることなく払わなければならないのです。


◆成果主義の賃金・人事制度

 製造工程やホワイトカラーのルーチンワークの業務は別として、専門的職種や非定型的な判断業務においては、その成果が必ずしも労働時間に比例するものではありません。とりわけ柔軟な発想や対応、豊かな感受性が求められる最近のヒューマンワークにおいては、個人の業績の格差が極めて大きくなります。そうなると、生産性が低く効率の悪い人ほど長時間労働となり、結果として高い賃金を払っているという矛盾が生じてしまいます。フレックスタイム制や裁量労働制もありますが、要件も厳しく職種も限定されています。
 業績や成果をあげた人に厚く報いる人事制度の整備・改革に一日も早く着手すべきです。“やったら報われる”制度でなければ社員のやる気は引き出せませんし、企業の競争力も弱まります。一番の課題は、社員が納得できる人事評価制度の策定。人事評価制度は、その評価結果をダイレクトに昇格・給与・異動などの処遇や能力開発に反映させる重要な機能を担っているからです。ホワイトカラーにふさわしいルールづくりが肝心です。

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