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労働実務Q&Aこれで解決!

傷病休職による退職

Q.

当社の就業規則では、私傷病にもとづく欠勤が長期にわたる場合「休職」扱いとなり、休職期間満了時に傷病が治癒せず「休職事由が消滅しないときは退職」となっています。このような自動退職規定は法律上問題ありませんか。

A.

一定の日に自動的に終了することが就業規則に明示され、それと異なった例外的な運用がなされていないかぎり、問題となることはありません。休職期間満了までに治癒しなければ、休職事由が消滅しないこととなり、当然に退職したことになります。定年と同じように終期の到来による労働契約の終了と考えるのです。


◆休職の意義と法的性格

 休職とは、従業員を労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者が従業員に対し労働契約関係を維持したまま一定期間労務に従事することを免除または禁止する制度をいいます。
 公務員とは異なり、民間労働者には法律上の規定がないため、各々の企業において労働協約や就業規則で定めるのが通常です。休職の事由により様々な制度がありますが、労働者の都合による休職(傷病休職、事故欠勤休職、起訴休職、公職就任)と使用者の都合による休職(出向休職)に大別できます。
 傷病休職は、業務外の傷病による長期欠勤が一定期間(たとえば3ヶ月~6ヶ月)に及んだときに行われ、休職期間の長さも一律の場合と、勤続年数等に応じて異なる場合とがあります。このような傷病休職の法的性格をどう捉えるかというと、一種の解雇猶予の制度と考えるのが一般です。つまり、本来なら長期の就労不能により契約を維持することが困難となり、契約の解除(解雇)事由が生じているので解雇してもよいのですが、労働者の責に帰すべき欠勤とはいえない点を考慮して、一定の猶予期間を与えているのです。その間に病気の治癒等休職事由が消滅したときは復職させ、休職事由が消滅しないまま休職期間が経過したときは自動退職となります。
 賃金を唯一の生活の糧としている労働者にとっては少々酷かもしれませんが、会社としても休職期間中は社会保険料の会社負担分を拠出しなくてはならず、代替要員の手配などダメージは免れないのです。


◆当然退職規定の有効性

 会社によっては、休職期間満了時の休職事由の不消滅を退職事由とせず、普通解雇事由としている場合があります。そうしますと、当然解雇ルールに則り、解雇予告の手続も必要ですし、判例の解雇権濫用法理による合理性のチェックを受けることになります。休職期間満了によって自動退職となる場合と休職期間満了が解雇事由となる場合とで扱いが異なることになるのです。そこで、自動退職事由とされている場合も、判例の解雇権濫用法理を回避するための脱法的効果を容認しない見地から、解雇権濫用法理に整合するように限定的に解釈すべきだという考え方もあるのです。
 ただし判例は、傷病休職期間満了による自動退職を定年退職と同様にとらえ、「労働法が雇庸契約の終了には常に一般的に解雇の意思表示を要求しているものと解すべき根拠はなく」、傷病休職期間満了による当然退職を規定している場合にも「解雇告知を要求しているものと解すべき理由はない」ので、当然退職規定自体無効ではないと判示しています(電機学園事件、東京地決昭30・9・22)この際、使用者は、労働者の職場復帰の可能性を判断するために、労働者に医師による診断書の提出を要求することが必要でしょう。

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