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労働実務Q&Aこれで解決!

経営理念の浸透策

Q.

3年前に父親から事業を引き継ぎ、じり貧傾向にある業績を立て直すために、日夜辛酸をなめています。伸びていく社風にするべく、経営理念をつくり、朝礼や会議などで話していますが、従業員の覇気が感じられず、組織の活性化につながっていません。どうしたら、経営理念を浸透させられますか。

A.

従業員の心のベクトルを揃えるために、経営理念を策定するのは大事なことです。その際、多くの従業員が共鳴できるよう内容を吟味し、わかりやすく表現すると同時に、人事評価制度などの仕組みにリンクさせることです。個人の目標、役割、成果責任などを確認、徹底させることができるからです。


◆経営理念とは

 「わが会社は何者で、どこへ行こうとしているのか」を端的に表わしたものが経営理念です。経営トップが最も大事にしている上位概念であり、会社の目的、組織の価値観、企業哲学といってもいいでしょう。経営理念の確立されていない会社は、永続することはできません。なぜなら、経営理念こそ「世の中での存在理由」を問われる事業経営の根幹を成すものだからです。
 経営理念は多義的に用いられていますが、主として3つの意味に分類することができます。その1は、経営ビジョン。会社が向かうべき方向性や近未来の具体的な青写真を示すものです。その2は、組織のミッション。どのようなことで社会に貢献できるのか、企業の使命や存在意義を表わします。その3は、事業ドメイン。企業が存続・発展するために必要な事業領域を決めることです。


◆経営理念策定の留意点

 経営理念の成文化と浸透は、無生物たる集合体に生命(いのち)を吹きこむことであり、経営トップの最も大切な役割といえます。多くの従業員の共感を得なければいけませんから、わかりやすく明確に示し、内容にもある程度の普遍性が求められます。ですから、経営者は誰よりも勉強しなければならないのです。次に、策定の留意点を考えてみます。
 まず第一に、経営理念はビジョンや指針を誰にでもわかる言葉で表現し、全員に考え方を共有してもらわなければなりません。方向や到達点を示すことにより、従業員の不安を払拭し、前向きの姿勢を引き出すことができます。
 第二に、経営理念は大義名分を含むことも必要です。「人はパンのみにて生くるにあらず」といわれるように、人間は意味を求めて生きる動物です。共鳴できるメッセージは、働きがいや生きがいを提供します。
 第三に、経営理念は従業員のやる気を起こさせるものでなければなりません。企業が生んだ利益は構成員に還元され、貢献に応じた処遇を約束することです。


◆人事制度への落としこみ

 経営理念は、「期待する人材像」に具現化し、キーワードにして職務基準書や人事評価制度に散りばめます。具体的には、「期待する行動指標」「求められる知識・技能」「好ましい意欲・態度」「成果に結びつく行動特性」等の指標や評価要素に落としこみます。つまり、会社が期待する職務レベルや行動基準、あるいは自社独自のモノサシをあらかじめ従業員に呈示し、それに基づいて評価や処遇を行います。
 とりわけ、人事評価制度は、賃金等の査定を主目的とするのではなく、個々人の職場での具体的な役割や成果責任を確認しながら、分担した成果遂行の重要性を認識しあうコミュニケーションツールとして活用します。このような人事制度を設計し、定められた手順を実行することにより、自ずから経営理念は浸透していき、組織風土(企業文化)に醸成するのです。

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