外国人技能実習生の法的保護
Q. 外国人研修生・技能実習生を受け入れている一部の企業では、彼らを実質的に低賃金労働者として酷使し、さらには賃金不払いや時間外労働関係法規違反の事例が続発している等のマスコミ報道もありました。この制度の趣旨をよく理解していないことが要因と思われます。ただ、研修生保護に向けた制度の見直しも進んでいると聞いておりますが‥‥‥。 |
A. 制度発足以来、様々な問題が発生しています。このたび制度の見直しが必要と判断され、昨年7月に「出入国管理及び難民認定法」(入管法)が改正され、新たな技能実習生制度が2010年7月1日から施行されました。新制度では、技能実習生の法的地位が確立し、入国1年目から労働関係法令上の保護が受けられるようになり、受け入れ側の責任も強化されました。 |
◆在留資格「技能実習」の創設
外国人技能実習制度は、日本の技術等の移転を通じて諸外国の産業発展に寄与する人材の育成が目的。わが国の国際協力・国際貢献の一翼を担うもので、制度改正の前後を通じてこの理念に変更はありません。
技能実習生の受け入れは、「団体監理型」と「企業単独型」の2つに区分されます。ここでは、事業協同組合や商工会議所等がそのメンバーである企業と協力して技能実習生を受け入れる「団体監理型」について説明します(中小企業の利用が圧倒的に多い)。
まず、技能実習1年目の在留資格は、「技能実習1号ロ」になります(これに対し、企業単独型は「技能実習1号イ」)。この在留資格で行うことができるのは、受入れ団体の下で日本入国直後に行われる講習による「知識の修得活動」および受け入れ企業との雇用契約に基づいて行う「技能等の修得活動」。
引き続く技能実習2年目・3年目の在留資格は、「技能実習2号ロ」(企業単独型は、「技能実習2号イ」)。この在留資格で行うことができるのは、「技能実習1年目の活動に従事して技能を修得した者が、更に技能等に習熟するため、雇用契約に基づき1年目と同じ会社で同じ業務に従事する活動」です。
ただし、技能実習1年目から2年目に移行できる職種・作業は、2010年4月1日現在で66種123作業となっています。
在留資格「技能実習」で日本に滞在できる期間は、「技能実習1号ロ」と「技能実習2号ロ」を併せて3年以内。この点は従来と変わりません。
◆技能実習生の処遇と監理団体の責任
新制度において、技能実習生は日本に入国する前に、受け入れ企業との間で雇用契約を締結しなければならなくなりました(効力を生じるのは「技能等の修得活動」を開始する時点から)。
つまり、改正入管法は、在留資格として新たに「技能実習」を創設し、技能実習生の法的地位の安定を図るとともに、入国1年目から雇用契約に基づく技能等の修得活動などを義務づけ、技能実習生に労働基準法や最低賃金法の保護が及ぶようにしたのです。
従来の研修生と異なり、労働者として取り扱われますので、労働の対価としての賃金が支払われ、時間外・休日労働を行うこともできます。日本人と同じように、労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)も当然、強制適用になります。
技能実習の指導・監督・支援を行う事業協同組合等の監理団体の役割と責任も強化されました。監理団体が送り出し機関と連携して行う技能実習生の受け入れは、職業紹介行為に該当し、職業安定法に基づく「職業紹介事業」の許可または届出が必要となります。1月に1回以上の実習実施機関への訪問指導や3月に1回以上の監査の実施および地方入国管理局への報告義務等が、受け入れ期間全般にわたって課せられいます。
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