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労働実務Q&Aこれで解決!

サービス残業の解消

Q.

いわゆるサービス残業により、企業が労働基準監督署から是正指導を受け、不払分を支払わされた、という新聞報道をよく見かけます。当社では、従来よりタイムカード等によらず、自己申告制によって労働時間を把握しています。これにより不適正な運用がなされていないか、一抹の懸念がないわけではありません。どのような点に注意したらよいでしょうか。

A.

まず、自分の働いた時間を適正に申告するよう、労働者に対して十分な説明をして下さい。そして、申告された時間と実態が合っているかどうか、必要に応じて実態調査をすること。さらには、時間外労働の上限時間数を決めたり、残業手当を定額払いにするなど、労働者の正確な申告を妨げるような要因を作り出さないような改善措置を講じてください。


◆サービス残業とは何か

 サービス残業――。どこかしらソフトな響きさえただよう言葉です。しかし、何のことはない「賃金不払残業」にほかなりません。すなわち、所定時間外に、実際に働いた労働時間に見合う所定の賃金や割増賃金を支払わないで働かせることです。企業にとって、これほど不名誉でカッコワルイことはありません。
 いろいろなパターンや手法があります。おたずねのケースのような残業の請求を労働者自身にゆだねる自己申告制により、正しい時間を申告しにくくするタイプ。残業代を出さなくてもよい管理職の範囲を拡大するケース(いわゆる名ばかり管理職)。一定額以上の残業代を支払わない定額残業制。年俸制にして割増賃金が含まれているとして実際には支払わない年俸組込型等々。
 なぜサービス残業がいけないのか。
 それは労基法37条に違反するから。労働に見合った賃金を支払わない契約違反だからです。労基法37条は強行規定であり、たとえ労使合意のうえで割増賃金を支払わない申し合わせをしても無効です(昭24.1.10基収68号)。時間外労働の慢性化は、長時間労働や過重労働になりやすく、最悪の場合、過労死や過労自殺につながりかねないから。


◆賃金不払残業をなくすために

 そこで厚生労働省では、「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(平15.5.23基発0523004号)を策定し、4つの対策を示しています。
 ①労働時間適正把握基準を守る
 使用者は、労働時間を適正に把握し、記録する責務があります。たとえば、単に「1日9時間」と記録するのではなく、労働日ごとに始業、終業時刻を確認して記録することが必要です。とりわけ自己申告制については冒頭に述べた点に留意して下さい。詳細は、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13.4.6基発第339号)が示す方法に沿うのがよいでしょう。
 ②職場風土を改革する
 「サービス残業があるのは仕方がない」という職場の風潮をなくしていくことも重要です。そのために、経営トップ自ら決意を表明し、労使合意による賃金不払残業撲滅宣言を行うなど、労使の共通認識を持つことが大切です。
 ③適正な労働時間管理のためのシステム構築
 出退勤時刻等の記録や社内アンケートなどにより実態を把握し、解消に向けたマニュアルを作成するなどのシステム整備も必須です。サービス残業の温床となっている業務体制なども見直しましょう。
 ④責任体制を明確にし、チェック体制を整備
 労働時間を適正に把握するためには、責任者を明確にしその者に管理権限を与える事も肝要。会社や労働組合が相談窓口を設置し、情報収集を積極的に行うことも有効です。その際、相談者を不利益に扱わないよう配慮しましょう。

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