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労働実務Q&Aこれで解決!

新人事制度の導入

Q.

当社では、主力商品の売上が伸び悩むなか、社員の高齢化が進み、年功賃金による給与の支払いが限界にきています。このたび、役員会の決定により、「能力や成果を重視した賃金・人事制度を導入せよ」との大役を命じられました。しかし、やることがたくさんあり、どのような手順、推進態勢でやればうまくいくのか迷っています。ご教示いただけませんか。

A.

まずは導入目的を明確にする。つぎに工程表づくり。論理的思考の1つであるミッシー(MECE)の技法が有用です。モレやダブリをなくしてくれます。検討項目の概要が見えてきたら、進め方をプロセスで考えます。さらに、作業を階層化して作業分解図にまとめる。推進態勢は、専門家の助言を得ながら、プロジェクトチームを編成して進めてゆきます。


◆新しい人事制度の導入手順

 [第1ステップ] 推進態勢の確立
 専門的な推進機関としてプロジェクトチームを編成します。最初に行うことは、導入目的の明確化。全従業員から共感を得られるような大義名分のある目的を掲げます。人事制度改革はあくまでも手段。目的と手段を逆転させないことが重要なのです。
 つぎに、具体的スケジュールの確定。実施日から逆算して、無理のない計画をつくります。私の経験では、少なくとも半年から1年半の期間が必要です。
 [第2ステップ] 現状分析と基本方針
 現行の制度を分析して、課題や問題点を整理します。これを踏まえて新人事制度の方向性や基本方針を決定。当然、企業の目的、存在意義、使命等を成文化したものである経営理念を参考にしたり、経営トップへのヒアリングも行います。この時点で、わが社の「期待する人材像」をキーワードで表現しておくと、後の職務基準書づくりに役立ちます。
 [第3ステップ] 人事制度の設計
 本体の設計に入ります。フレームワークとしては年功制を払拭している職務グレード制度が最適。これが人事制度を作動させる基本ソフトとなります。つづいて、「期待する人材像」を具現化した職務基準書づくり。全社をあげて職務調査を実施し、指標に仕上げます。
 処遇や人材育成への橋渡しの機能を担う人事評価制度の策定は、作業全体の山場。出来不出来が制度全体の有効性を左右します。
 そして給与制度。「年功」という属人的要素から「仕事」基準へシフトします。組織への貢献度に応じた賃金処遇が公平です。賞与や退職金も見直しが必要。能力開発制度や人材活用制度も連動して設計します。
 [第4ステップ] 新人事制度説明会
 新人事制度運用マニュアルや各種規程の見直しと整備が終了した段階で、社員に対し、新人事制度運用説明会を実施します。
 [第5ステップ] 新人事制度への移行
 評価者研修などを実施し、1年位は本格稼動に向けた“プレ期間”としてはいかがでしょう。 


◆新人事制度導入の推進態勢

 賃金や人事制度改革は、本来は経営トップ層が構想し、決定すべき課題です。しかし、専門的事項に時間を割く余裕はありません。そこで、一定期間、専任的に制度設計に取り組めるメンバーを選出し、推進態勢の母体となるプロジェクトチームを編成します。多くは、役員会の諮問機関に位置づけられます。
 手前味噌になりますが、制度の設計、導入、現場における適正運用をするためには、ノウハウと経験を持っている外部コンサルタントの助言を受けながら進めるのが賢明です。とりわけ人事制度の改定には、労基法をはじめとする周辺法規の知識が必須です。逆にいうと、コンサルタントへの全面的委嘱(丸投げ)はよくありません。社員の支持や参画のない一方的導入は、社員の懐疑心や反発を招き、運用がうまくいかないからです。

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