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労働実務Q&Aこれで解決!

事業場外労働のみなし制

Q.

当社の営業社員は、「得意先訪問予定表」をあらかじめ上司に提出し、随時指示を受けて外出して営業活動を行います。通常は終業時間を過ぎて帰社することが多く、報告または日報を書く義務があります。また、場合によっては、携帯電話による上司への報告または指示により、自宅へ直接帰ることもあります。このような社員には「みなし」労働時間が適用されるのですか。

A.

事業場外労働に関する「みなし労働時間制」の対象となるのは、事業場の外で労働するため、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務です。おたずねのように、事業場外の労働であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能ですので、みなし労働時間制の適用はありません。


◆労働時間の算定方法

 外勤営業社員や取材記者など事業場外で働く人たちについては、何時間の実労働時間か算定が困難であり、最近このような業務が増えたこともあって、労基法38条の2は次のように規定しています。

  1.  労働者が労働時間の全部または一部について事業場施設の外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、――所定労働時間労働したものとみなす(したがって、時間外労働とならない。これが原則)。
  2.  当該業務を遂行するためには通常所定労働時間をこえて労働することが必要となる場合には、――当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす(みなし時間に応じて時間外労働となる)。
  3.  2.の場合に労使協定があれば、――協定で定める時間とみなす(業務の実態を熟知している労使が決めるのが適当なので)。

 法律用語上「みなす」という規定は、性質の異なるものをある一定の法律関係において同一のものとして、同一の法律効果を生じさせることをいいます。法律による一種の擬制です。反証をあげただけではくつがえらない点で「推定」とは異なります。
 つまり、本条の要件を満たせば、実際の労働時間の多寡にかかわらず、みなされた時間労働したものと取り扱うという規定です。 


◆事業場外労働時間の範囲

 事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務です。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事している場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はありません(昭63・1・1基発1号)。

  1.  何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合。
  2.  事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合。
  3.  事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合。

 事業場外労働に関するみなし労働時間制は、労働時間の長さの計算についてみなし処理を許容するというだけのものです。労働時間計算以外の休憩時間、休日、時間外・休日労働、深夜業などの規定の適用は依然としてあります。当然、使用者はそれぞれの適用を遵守する必要があります。

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