HOME >これで解決!労働実務Q&A>賃金・賞与・退職金>平均賃金 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

平均賃金

Q.

労基法26条は、「使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」としています。要するに、天災事変等の不可抗力による場合以外について、広く使用者に休業手当の支払義務を課しているものです。この場合の「平均賃金」とはどういうものですか。

A.

労基法12条に定義と算定方式を定めています。「平均賃金」とは、原則として、「算定すべき事由の発生した日以前3ヵ月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」のことです。実務上、賃金計算については賃金締切日が定められており、この期間によって計算する方が簡便なため、直前の賃金締切日が起算日となります。


◆平均賃金の役割

 労基法は、使用者に支払いが義務づけられる一定の手当や補償について、いずれも「平均賃金」の一定日数分または一定割合と定めています。平均賃金を算定の尺度としているのは、次の場合です。
  ① 解雇予告手当(20条)
  ② 休業手当(26条)
  ③ 年次有給休暇の賃金(39条)
  ④ 災害補償(76条~82条)
  ⑤ 減給制裁の限度額(91条)
 このほか労災保険法は、「給付基礎日額」という言葉を用いていますが、その実質は平均賃金と同じものです(労災保険法8条)。 これらの補償や手当は、いずれも労働者の生活を保障することにその目的があり、その尺度としての平均賃金もできるだけ労働者の実際の収入に近いものであることが要請されます。このような観点から、平均賃金の算定方式が定められているのです。


◆平均賃金の算定方法

 平均賃金の算定方式を再確認しましょう。
      
   平均賃金=直近3ヵ月の賃金総額÷直近3ヵ月の総日数
   
 分子となる賃金総額には、通勤手当、精皆勤手当、残業手当など、算定期間中に支払われるすべての賃金が含まれます。ただし、以下の賃金は除外されます。これらの賃金を算入すると、算定事由の発生時期によって平均賃金の額に著しく高低を生ずる可能性があるからです。        
  ① 臨時に支払われた賃金
  ② 3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  ③ 法令または労働協約の定めに基づいて支払われるもの以外の実物給与
 なお、直近3ヵ月中に次の期間がある場合は、その期間の日数(分母となる日数)およびそれに対応して支払われた賃金額(分子となる賃金額)を除いて計算します。原則にしたがって計算すると、平均賃金が不当に低くなるおそれがあるからです。
  ① 業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間
  ② 産前産後の休業期間
  ③ 使用者の責に帰すべき事由による休業期間
  ④ 育児・介護休業期間
  ⑤ 試用期間
 さらに、日給制、時給制、出来高払い制などの請負給制の場合には、特例があり、次の式で計算される最低保障額が定められています。
  
最低保障額=算定期間中の賃金総額÷算定期間中に労働した日数×100分の60
  
    労働日数により賃金が大きく変動する賃金支払形態の場合には、分母を総日数で計算すると平均賃金が異常に低額になる可能性があるからです。1稼動日当たり平均賃金の60%としたのは、一般の社会保障制度に基づく最低保障賃金額の事例に準じたものです。

ページトップ