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労働実務Q&Aこれで解決!

賃金・人事制度の必要性

Q.

創業して10年めを迎えたIT企業です。業界でも40人規模のエンジニア集団として認知されてきました。ところがここへ来て、期待していた若手社員5名が会社を辞めたい、と言ってきたのです。理由は、昇給・昇進や賞与にルールがなく、社長の気分で決められており、会社の将来にも展望が持てない、とのこと。引き止めるためにどうすればいいか困っています。

A.

早急に話し合いの場を設け、真摯に彼らの言い分を聴き、改善に向けた前向きの提言をすべきです。会社の将来像をビジョンとして明確に示し、「やったら報われる」人事の仕組みやルールづくりに着手することを約束しましょう。優秀な人材を確保し、定着させるためには、中小企業においても、賃金・人事制度の整備を避けて通ることはできないのです。


◆公平な人事と適正処遇の実施

 まずは成り行き管理からの訣別です。従業員が経営者に求めるもの。それは、公平な人事。資質としては、“公平無私”の姿勢。従業員が経営トップに対し、「やったらやっただけのことをしてくれるであろう」という信頼感を持っているかどうか、が試金石となります。この信頼感や期待が裏切られると、会社への忠誠心はたちまち揺らいでしまうのです。
 ただし、この信頼感を得るのは容易ではありません。地道な実績の積み重ねが必要です。その第一歩が、公平な人事と適正な処遇を実施できる仕組みとルールづくりです。
 この際、京セラの経営理念のように、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」ことを経営の第一の目的と宣言することもおすすめです。顧客や株主、社会への奉仕よりも、何より従業員満足を優先する。物質的なものだけでなく、精神的にも十分報いる責任があることを明確にする。従業員のやる気とロイヤルティーは自ずから高まっていきます。


◆ビジョン実現型の人事制度の構築

 会社が向かうべき方向性や近未来の具体的青写真を示すのが経営ビジョンです。経営トップは、従業員を鼓舞するような魅力的で鮮明なビジョンを構想し、掲げなければなりません。方向や到達点が明らかになることにより、従業員自らの将来像と重ね合わせることができ、先行きの不安を払拭することができるからです。 
 経営ビジョンをさらに経営目標や経営指針に細分化し、これを遂行していくわが社の「期待する人材像」に具現化します。これを職務基準書、人事評価、目標管理などの運用ツールに落としこむのです。つまり、会社が業績を上げるためには何が重要で、常日頃、従業員にどんな行動をとってほしいのかを、会社のメッセージとして伝えるのです。
 賃金・人事制度を構築することにより、企業の業績向上や目標達成につなげていきます。


◆制度の運用を通じて人材を育成する

 自社のビジョンを実現していく人材は、自前で育成していくのが鉄則。必要なスキル(技術・技能)や固有のマインド(意識・心構え)を徹底的に鍛え上げることができるから。
 その機軸となるのが、職務基準書、人事評価、目標管理などの人事システムです。
 職務基準書は、職務要件、能力要件、意欲・態度要件を詳細に明示してあり、日常の実体験を通じて、従業員に“気づき”と改良・改善の機会を与えます。
 人事評価は、従業員1人ひとりの仕事ぶりを把握し、あるべき達成水準と現状の職務行動とのギャップを測定。育成ニーズを明らかにして会社の研修体系の策定に活用します。
 目標管理は、上司と部下との定期的面談によって意思疎通を密にして、経営情報の共有化とベクトル合わせを行います。つまり、管理者が部下を指導・育成する際、管理者を強力に支援するマネジメントツールでもあるのです。

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