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労働実務Q&Aこれで解決!

社会保険の不服申し立て

Q.

60歳になったので、社会保険事務所に赴き、老齢厚生年金の「裁定請求書」を必要書類とともに提出しました。ところが先日社会保険事務所から届いたのは「老齢厚生年金不支給について」という通知書。必要な資格要件を満たしていないため、支給されない旨が書いてありました。これには全く納得がいきません。どうしたらいいでしょうか。

A.

社会保険の不服申立ては、特別の権利救済制度となっており、社会保険審査官および社会保険審査会の二審制がとられています。不支給の決定に不服があるときは、その決定があった日の翌日から起算して60日以内に、文書または口頭で、各都道府県に設置されている社会保険審査官に、「審査請求」することができます。


◆権利救済制度

 社会保険の各制度(健康保険、厚生年金保険、国民年金)の保険者は、被保険者等からの請求を受けて保険給付の支給あるいは不支給の処分を行います。社会保険給付の支給・不支給処分は、現行法上行政処分という性格が付与されているため、この処分をめぐる争いは、行政上の不服申立ておよび行政訴訟手続によることになります。行政上の不服申立てに関する一般法は「行政不服審査法」です。ところが、社会保険の不服申立ての手続には、特別法である「社会保険審査官及び社会保険審査会法」が適用されます。また不服申立て前置が採用されているため、原則として、審査請求・再審査請求手続を経てからでないと、被保険者等は支給処分・不支給処分に対する取消訴訟を提起できないことになっています。
 社会保険行政において、このような特別の不服申立て処理が行われるのは次のような理由からです。
1. 社会保険行政は、被保険者、被保険者の家族などの生活の安定を図ることを目的としているので、侵害された権利利益の救済は、費用を負担することなく簡単な手続で、迅速・公正に行われることが特に要求されていること。
2. 社会保険行政は、保険給付の支給、保険料の徴収など大量の処分をするため、不服申立ての件数も非常に多く発生すると見込まれること。
3. 社会保険行政は、制度の仕組みが複雑であり、多分に専門的・技術的な分野が多いこと。


◆不服申立ての仕組み

 社会保険の不服申立て制度は既に述べたように二審制です。
 第1次審査機関は、各都道府県に置かれている独任制の社会保険審査官です。社会保険審査官は、社会保険行政機構の1つではありますが、その職務は他の者からの拘束を受けることなく独立して行われ、地方事務官のうちから、厚生労働大臣が任命しています。
 第2次審査機関は、厚生労働省に設けられている合議制の社会保険審査会です。社会保険審査会は委員長および5人の委員によって構成されており、国会の同意を得て内閣総理大臣が任命します。各委員の職権は独立して行うことを法律で明記しており、裁判官と同じように強い身分保障が与えられています。
 社会保険審査会は、通常3人の委員によって構成された部会で審議され、審理は公開され、再審査請求人や代理人は、意見を述べることができます。
 訴訟における判決に当たるものが裁決です。判決と同様、却下裁決、請求棄却および請求認容裁決があります。再審査請求の請求容認率は高くはありません。しかしつい最近ですが、老齢厚生年金の再審査請求の事案で筆者が代理人となり、請求容認(原処分取消)を勝ちとりました。

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