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労働実務Q&Aこれで解決!

リーダーの資質

Q.

 もうすぐ還暦を迎える二代目のオーナー経営者です。創業者の父から引き継いだときは小さな家業でしたが、従業員300人規模の企業になんとか成長させることができました。現在の悩みの種は、事業の継承。息子を含め社長候補となる部長が数名います(世襲にはこだわっていません)。まずは取締役に登用し、鍛えながら適性を見極めたいと思っています。次代を担うリーダーをどういう基準で選ぶべきか、アドバイスを一言。

A.

 経営トップになる人の条件はたくさんあります。誰よりも仕事ができる。論理的な思考力。決算書が読め、計数に明るいこと。燃えるような情熱と冷徹な理性。組織を導く統率力。目的達成への粘り強さと手段の柔軟性。やさしさと厳しさ。明るく前向き…等々。ただし、人の上に立つ人は、才能(商才)よりも人間性や人柄を重視すべき、と考えます。〈自立〉〈努力〉〈人格〉の3つをキーワードとして挙げることができます。


◆自立―自己を拠りどころに

 自立とは、自分の頭で考え、自分の足で立つこと。人に頼らないで自分に頼ることです。すべてのビジネスパーソンが志向すべきテーマですが、経営トップには必須の資質です。
 なぜなら、社長は物事を自分の意志で決断しなければならないから。企業における最終決裁者なのです。日々、ディシジョン・メイキングを迫られる立場にあるのです。現在の企業の規模や業績は、これらの判断が累積した結果に外なりません。
 人に頼らないということは、自由であるということ。自由な精神があればこそ、何の拘束もなく、創造性やベンチャースピリットを発揮することができるのです。


◆努力―理屈抜きの行動

 できる経営者は、理屈よりも行動することの大切さをよく知っています。行動しないかぎり結果は生まれないからです。まず行動してみる。そうすれば何らかの結果が出る。自分の考え方が正しかったか否かがはっきりします。行動と結果の中から正しいものを選んでいけばいいのです。
 ヘ理屈、寝言、空理空論。結果が問われるビジネスの世界で、たわごとは通用しません。ましてや経営者には、従業員とその家族の幸せを追求し、実現する責任があります。従業員の誰よりもよく働き、率先垂範、全身全霊を経営に打ち込まねばならないのです。
 「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」(永守重信)が、リーダーの行動規範。人が無理だ、不可能だということを、「誰にも負けない努力」(稲盛和夫)、「圧倒的な努力」(見城徹)、「強烈な努力」(藤沢秀行)でやり遂げるのがリーダーの役割です。


◆人格―心を高める

 動物と人間の一線を画するもの。それは精神と魂の領域。人間としての精神の幅を広げ、奥行きを深めて死を迎える。これこそ人間の特権。とりわけ組織の頂点に立つ経営者は、人格を高めていくことが肝要です。企業経営には、経営者の考え方、価値観、人間性といったものが強く投影されるからです。私たちは、これまでたった1人のリーダーによって、企業の盛衰が決まることをたくさん見聞してきました。
 めざすべきは、「人間としての正しい行い」。公正、公平、誠実、正直、謙虚、素直、優しさ、思いやり、といったベーシックな言葉で表わされる倫理観や普遍的価値観を持ち、実践することに尽きます。
 道理にかなった考え方は、経営者の判断基準のよすがとなります。正しい判断であれば、時間や空間を超えて受け入れられるでしょう。経営者は、自らの信念とするにとどまらず、経営理念や組織のミッションに昇華させ、全従業員の行動指針として掲げていくことも重要です。フィロソフィーの共有が、よい企業文化、社風をつくります。

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