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労働実務Q&Aこれで解決!

うつ病の再発と休職規定

Q.

 当社の就業規則には、傷病休職について、「休職期間が満了しても傷病が治癒していないときは退職とする」旨の自動退職規定を定めています。うつ病で休職していた従業員が、「寛解により就労可能」と記した主治医の診断書を提出し、復職を求めてきました。担当者が面談したところ、目もうつろで質問にも的確に答えられない様子。この診断書に会社は拘束されますか。復職して再発、休職を繰り返した場合の対応はどうすればよいでしょう。

A.

 主治医の診断書は、患者との治療上の信頼関係が高いため、本人の希望に沿って書かれる場合が多いものです。「治癒」についての誤解や見解の相違もあります。会社はこの診断書に拘束されることはありません。職場復帰させるかどうかの判断主体は、あくまで会社です。精神性疾患の場合、通常の疾病と異なり、いったん症状が回復しても再発することが多いようです。前後の休職期間を通算できるよう休職規定を整備する必要があります。


◆主治医の診断書に会社は拘束されるか

 復職の条件となる「治癒」とは、いかなる状態をいうのでしょうか。ここでいう「治癒」とは、健康時に行っていた業務を遂行することができる状態、民法でいう「債務の本旨に従った履行の提供」ができる状態に戻ることを意味します。裁判例では、原則として「従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したときをいう」(平仙レース事件 浦和地判40.12.16)と解しています。
 ただし、労働契約において職種が限定されている場合(回復の程度は比較的高く求められる)と、限定されていない場合(配置転換可能であれば会社の配慮義務が要請される)について、判断基準となる健康状態の回復程度に違いが見られます。 
 本件のように、主治医の診断結果が抽象的表現にとどまり、本人との面談の結果、復職の判断が困難と思われるような事案についてどう対応すべきでしょうか。
 診断書は重要ですが、会社が復職可能かどうかを判断する材料の1つにすぎません。会社が安全配慮義務を負う以上、主治医への医療情報の開示を要請し、場合によっては、会社の産業医や指定医への受信命令をすべきでしょう。そのような措置がとれるよう就業規則に定めることが、後日のトラブル回避につながります。


◆休職・復職・再発を繰り返す従業員への対応

 うつ病による休職後、治癒したとして復職を認めたところ、疾病が再発して再び休職となり、これを繰り返すという従業員に対する取扱いが問題です。精神疾患の場合、治癒したかどうかの判断が専門家でも難しく、再発するケースも多いといわれています。
 再発を想定していない通常の休職規定では、いったん復職すると時効の中断のような扱いとなり、新しい私傷病として欠勤期間はゼロから計算し直すこととなるのです。
 本来、傷病休職とは、傷病により従業員を職務に従事させることが長期にわたり不能または困難となったときに、労働契約上の地位をそのままにし、職務に従事させることを免除または禁止する処分。債務不履行による契約解除を猶予し、回復状況を待つ制度です。数年にわたり同じ病気で休職することを繰り返す事態は予定していないのです。
 そこで、休職期間の通算規定を置くことが重要になるのです。たとえば「復職6ヵ月以内に、同一または類似の事由により欠勤するときは再休職とし、前休職期間と通算する」のような規定が考えられます。再休職の期間は残存期間ということになります。
 これは、就業規則による労働条件の不利益変更になるのではないか。欠勤期間の通算を内容とする休職規定の変更の事例で、労働者にとって不利益変更であることを認めたうえで、その必要性および合理性を検討し、これを肯定。就業規則の変更として有効とした裁判例があります(野村総合研究所事件 東京地判平20.12.19)。

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