HOME >これで解決!労働実務Q&A>紛争解決制度・労使関係>労働紛争解決システム サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

労働紛争解決システム

Q.

 平成13(2001)年に「個別労働紛争解決促進法」、平成16(2004)年に「労働審判法」が制定され、労働紛争を解決するためのインフラが飛躍的に整備、充実されてきました。労働者の権利意識の高まりと相まって、新たな法的規律が紛争を増かさせる要因となるような気もします。これらの新旧労働紛争解決システムの全体像を俯瞰し、整理分類して、各制度の特色を示していただくと、たいへんありがたいのですが。

A.

 いろいろな分類が可能です。まず、労働紛争の解決方法として、当事者自ら解決に当たる「自主的紛争解決」と、それ以外の「第三者による紛争解決」があります。後者は、行政や裁判所などの公的機関が関与する「公的紛争解決」と、私人が関与する「私的紛争解決」に分けられます。公的紛争解決システムは、判決や命令など公権的に紛争を解決する「判定的解決」と自主的な紛争解決を支援する「調整的解決」とに分けることができます。 


◆行政による労働紛争解決システム

① 個別労働紛争解決促進制度
 都道府県労働局に3つの制度が用意されています。その1は、総合労働相談窓口における情報提供・相談。その2は、都道府県労働局長による助言・指導。その3は、紛争調整委員会によるあっせん(調整的解決)。あっせん手続の特徴は、迅速・簡便・無料。経済的に余裕のない労働者からも比較的アクセスしやすい制度といえます。
② 労働委員会による紛争解決
 従来からあった集団的労使紛争に対する調整・救済に個別労働紛争解決機能が加わりました。前者は、労働関係調整法のによる労働争議の斡旋・調停・仲裁(調整的解決)と労働組合法による不当労働行為の救済(判定的解決)であり、後者は、都道府県の労働委員会のあっせん(調整的解決)です。労働局のあっせんより解決率は高くなっています。
③ 都道府県における労働相談・あっせん
 個別労働紛争解決促進法は、地方公共団体にも、紛争解決促進のために必要な施策を推進すべき努力義務を課しています(20条1項)。先の都道府県労働委員会のあっせんは都道府県知事からの委任事務。このほか労政主管局等で労働相談を実施しています。


◆司法による労働紛争解決システム

① 労働審判手続
 労働関係の専門家が加わった労働審判委員会が、双方の言い分や証拠をもとに審理し、トラブルの実情に合った柔軟な紛争解決をめざします。審理は3回以内。通常訴訟より大幅に迅速で、3~4ヵ月で結論がでます(判定的解決)。当事者は、過料の制裁付で出頭を強制される点が労働局のあせんと違うところ。一定のコストは免れませんが、裁判という国の装置を背景とした実効性の確保が何よりの魅力です。
② 通常訴訟手続
 民事紛争のうち、事件の終局的な判断を下すことを目的とする手続です。「白黒をはっきりさせる」ものだけに、時間とコストを要します。
③ 仮処分手続
 通常訴訟(本案訴訟)による権利の実現を保全するため、簡易・迅速な手続により暫定的な救済措置をとる手続をいいます。


◆民間の労働紛争解決システム

① 自主的紛争解決
 およそ紛争は、当事者の合意を基礎とする自主的な解決が望ましいもの。企業内における紛争解決ないし苦情処理制度の充実が急がれます。
② 第三者による紛争解決
 社会保険労務士会をはじめとして、民間ADR機関として認証を受けてあっせんを実施している団体が増えてきました。社労士は日常から企業と接しており、きめ細かな配慮が期待できます。

 
ページトップ