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労働実務Q&Aこれで解決!

有期労働契約の新ルールと課題

Q.

 定年までフルタイムで勤務することが前提となっている正社員に対し、契約社員、嘱託、パートタイマー、アルバイト、派遣社員など、非正規社員と呼ばれる雇用形態の人たちが増えています。いずれも、6ヵ月契約、1年契約など期間の定めのある労働契約で働いており、全国で1200万人と推計されているとか。このたび、こうした有期労働契約で働く人たちが、長期間安心して働き続けることができるよう、法律が改正されたそうですね。

A.

 労働契約法が改正され、有期労働契約のルールの拡充が図られました。1つは、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは労働者の申込みにより無期労働契約に転換させる仕組みの導入。2つめは、最高裁判例で確立している「雇止め法理」の明文化。3つめが、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることの禁止。2番目が平成24年8月10日から施行、1番目と3番目は、来年4月施行の予定です。 


◆改正法の3つの新ルール

① 有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
 同一の使用者との間で、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換できる仕組みを取り入れました。有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図るのがその目的。5年のカウントは、法施行日以後に開始する有期労働契約が対象です。
 通算5年を超えて契約更新した労働者が、その契約期間中に申込みをすると、使用者が申込みを承諾したとみなされ、無期労働契約が成立します。無期に転換されるのは、申込み時の有期労働契約が終了する翌日から。
 無期労働契約の労働条件は、別段の定めがない限り、直前の労働契約と同一となります。一般には定年まで働けると約束されますが、正社員になれるわけではないのです(18条)。有期労働契約と有期労働契約との間に空白期間が6ヵ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は5年のカウントに含めません。これをクーリングといいます。
② 最高裁判例で確立している「雇止め法理」の明文化
 有期労働契約は、契約期間満了により雇用は終了します。これが民法上の原則。しかし、雇用契約が反復更新されると、期間についての約束事は形骸化し、労働者も雇用継続への期待をもつようになります。使用者が更新を拒否する「雇止め」については、労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により一定の場合にこれを無効とする判例法理(雇止め法理)が確立しています。今回の法改正は、雇止め法理の内容や適用範囲を変更することなく、労働契約法に条文化しました(19条)。要件に該当するか否かについては、従来の裁判例と同様、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待をもたせる使用者の言動の有無などの判断要素が総合考慮されます(平24.8.10基発0810第2号)。
③ 期間の定めによる不合理な労働条件の禁止 
 同一の使用者と労働契約を締結している、有機契約労働者と無期契約労働者との間で、職務内容や福利厚生などの労働条件で不合理な待遇を設けることを禁じています(20条)。不合理な格差の労働条件の定めは無効となり、損害賠償の請求も可能です。


◆法改正後の企業の対応策

 期間の定めのない契約に移行することを阻止しようとすれば、雇用の通算期間を最大でも5年以内にする必要があり、就業規則や労働契約で明確にしましょう。期間の定めのない雇用に転換した後の非正規社員向けの処遇のための新たな規定整備も課題です。雇止め(更新拒否)を有効なものにするためには、更新の手続を厳格に行うこと。契約当事者が有機契約であることを明確に認識していること。業務内容や契約上の地位に臨時性が認められること等が考慮されます。

 
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