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労働実務Q&Aこれで解決!

人事考課制度

Q.

社内の年齢構成の高齢化に伴い、人件費の増加や若年層の士気の低下が目につき、年功に偏った賃金の限界を感じています。業績や成果を重視した成果主義賃金制度の導入を検討していますが、制度設計の最大のネックが人事考課制度です。人事考課制度策定にあたり留意すべきことと、人事考課の法的位置づけなどを教えて下さい。

A.

人事考課制度に求められるものといえば、公正、公平、納得の3つです。このねらいを仕組みの中にどう具現化させていくかが、人事制度全体の有効性を左右するといってもいいでしょう。また、法的観点から、人事考課は使用者の人事権の一部であり広範な裁量性もある反面、公正な制度づくりも要請されています。


◆人事考課制度の条件

 人事考課制度は、その評価結果をダイレクトに昇格、賃金、異動などの処遇や能力開発に反映させる重要な役割を担っています。人事制度のコントロールタワーの機能をもっているといってもいいでしょう。ですから、人事考課制度をいかに合理的に、自社に適した形で構築できるかどうかが、人事制度全体の有効性や運用可能性を左右するといっても過言ではないのです。
 人事考課に求められるキーワードは、公正、公平、納得の3つです。
 まず、公正な評価制度であるためのミニマムな条件は、評価要素や評価基準が明確であること。「会社が期待する人材像」が具現化されていることが必要です。社員にとって望ましいのは、人事考課表と連動した職能要件書や職務基準書をつくり、評価の基準となるモノサシを提示することです。最近では、「成果につながる行動特性」として注目を集めているコンピテンシー概念の活用により、行動レベルを質的な高さでより客観的に表現できるようになりました。 
 つぎに、評価制度の公平さを担保するもの。これは部下への要求水準の統一を図ることであり、考課者研修を実施することです。考課する管理者同士の「標準」評価を揃えることです。第一次評価と第二次評価を設けるダブルチェック方式の採用も有効です。
 さらに社員の納得感を得るために、制度の透明度を高め、ガラス張りの人事制度をめざすべきです。人事考課の方法やルールをオープンにし、評価結果を本人にフィードバックすることです。人事考課と目標管理・面談制度をリンクさせることにより、双方向的なコミュニケーションが強化されます。いずれにせよ、人事考課を精緻化させるための企業努力は、社員の納得感を高めるでしょう。
 さて、人事考課の法的位置づけについて。労働契約は、使用者の指揮命令の下で労働が行われることを特質としています。ここから使用者の人事権が発生し、賃金決定についても人事考課権が是認されるのです。人事考課権には、公正な考課を行う義務が内在しているというべきです。なぜなら、人事考課は賃金額を決定する最も重要な手続であり、その趣旨は民法の一般条項(1条2項、3項)等に見出すことができるからです。


◆「プロセス評価」の加味

 「成果」主義というと業績や結果至上主義ととられがちですが、決してそうではありません。コンピテンシー評価にみられるように、どんな行動をとったかについてのプロセス評価を加味しています。つまり、優れた働きぶり=会社の期待に応えた者を高く処遇する仕組みが成果主義の概念です。したがって、考課要素は成果や業績だけでなく、プロセスとしての発揮能力や意欲・姿勢・態度なども考慮するのです。法的にも、労働契約は、請負契約のように仕事の完成を目的とするものではなく、それに向けて誠実に努力することを内容とする債務として構成されているのです。 

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