私生活上の非行
Q. 従業員が就労時間外に事業場外で職務とは関係なく行う行為は、純然たる私生活上の行為であり、会社の支配や干渉を及ぼすことはできません。ところで、当社の就業規則には、「会社の名誉・信用を著しく毀損する行為」については、懲戒解雇することができる旨の規定があります。従業員が私生活上の非行によって刑事事件になった場合、この条項により懲戒処分にすることはできますか。飲酒運転により重大事故を起こした場合は、どうなりますか。 |
A. 会社は、従業員の私生活の行為全般にわたって職場規律や秩序を強要することはできません。犯罪を行えば、国家と国民という関係において刑事罰を受けることになります。しかし、企業も社会的存在であり、企業の社会的評価を低下させたり毀損させた場合、懲戒解雇処分に処することは可能です。判例は、就業規則に定める包括的条項に限定解釈を加えたり、諸般の事情を総合考慮する等の法技術により、懲戒権の行使を厳格に制限しようとしています。 |
◆私生活上の非行と懲戒処分
就業規則に規定された懲戒処分は、企業が事業活動を円滑に遂行するために必要なかぎりで、企業秩序を維持する権限を使用者に認めたもの。従業員の私生活全般にわたって支配する権限ではありません。しかし、従業員の私生活上の行為ではあっても、事業活動の遂行に直接関連を有するものや、企業の社会的評価を低下させたり毀損したことが認められる場合には、懲戒処分の対象とすることができます。
◆飲酒運転による事故と懲戒処分
飲酒運転による自動車事故については、重大事故が社会的に注目を集めた背景もあり、厳罰化の傾向にあります。平成13年の刑法改正により「危険運転致死傷罪」(208条の2)が、平成19年の同法改正により「自動車運転過失致死傷罪」(211条2項)が創設されました。
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