HOME >これで解決!労働実務Q&A>コンプライアンス・人材育成>ブラック企業 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

ブラック企業

Q.

 マスコミ報道によると、若者の働く環境が、かつてないほどひどい状況になっているそうですね。サービス残業やパワハラ、退職強要などが増え、うつ病や過労死・過労自殺に追い込まれる例もあとを絶たない。そういう違法で悪質な行為が横行している企業を「ブラック企業」と呼び、就職活動生の間で非常に恐れられているとか。もはや正社員めざしでシューカヅを勝ち抜いても油断はできない。「ブラック企業」とはどんな企業ですか。

A.

 厳密で定まった定義があるわけではありません。2008年頃から、若い世代を中心にインターネットで広がってきました。かつては「暴力団のフロント企業」という意味であった言葉が、いまは「違法労働をさせる企業」という意味に転じたわけです。リーマン・ショックを引き金として就職難の時代となり、一部経営者を強気にした、という指摘もあります。会社の離職率は、ブラック企業かどうかを見極める重要な指標になるでしょう。


◆ブラック企業のパターンと背景

 この問題に長く携わってきたNPO法人「POSSE」の今野晴貴氏にによると、ブラック企業問題とは、「大卒正社員が大量に採用されながら、大量に辞めさせられるという問題」と定義。わざわざ「正社員」として採用した若者をなぜ離職においやるのか、その理由は‥‥。第1に、有能な者の選別。第2に、過酷労働による短期間での使いつぶし。典型例は、2つのパターンがあるそうです。
 1つは「選別型」。大量に採用したうえで、「使える者」だけを残して、残りは自己都合退職を強要する、というもの。解雇を合法的に行うのはとても困難。そのために、いじめ、いやがらせ、などのハラスメント行為により、自己都合で退職するように追い込むという類型です。
 もう1つは、「使い捨て型」。仕事のきつさだけではなく、待遇が将来にわたって改善されず、同僚や先輩社員も次々と会社を去っていくケースです。「せっかく得た正社員の職」を失いたくない若者の足元を見て、無理な長時間やサービス残業を押しつけ、労働能力を消尽させるタイプです。
 産業構造の変化により3人に1人が非正規労働者。必然的に「正社員」の門は狭くなっています。こうした「正社員」への希望を逆手にとり、「ブラック企業」が世にはびこっているのです。


◆労働者・企業の対応策と課題

 まずは、労働者側の「ブラック企業」への対応策とは。1つめは、せっかくビジネスパーソンになったのだから、労働法を学びましょう。労働法=労働者保護法。労働者にどんな権利が認められているのか、会社が守るべきルールは何か、が定められています。法律を学んでおけば、会社の違法行為に気づき、自分を責めずに済みます。2つめは、違法行為が横行するような企業とは、キッパリおさらばすること。企業は一定の価値観や規範を共有する集合体。考え方が合わない企業に未練がましくしがみつくのは、かえって自分を不幸にします。コミュニティーには、思想・信条の自由もあり、会社を選ぶ自由もあるのです。
 一方、企業側の「ブラック企業」への対応策とは。「ブラック企業」と呼ばれることは、名誉あることとはいえません。信頼回復、汚名返上も容易ではない。企業不祥事と同様、経営破綻を招くほどリスクが大きいことを学ぶべきです。そもそも離職率が高いことはコスト高で割に合いません。経営者には、人間として守るべき道義や倫理についての深い認識が求められます。
 最後に。インターネットを使っての一方的な攻撃や糾弾は、一種の自力救済であり社会的制裁。レッテル貼りは潔さがなくいじめに通じます。現在、労働紛争を解決するためのインフラは十分に整備されています。相手が反論できるフェアーなフィールドで堂々と勝負しませんか。

 
ページトップ