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労働実務Q&Aこれで解決!

高額療養費制度

Q.

 健康保険の被扶養者である妻が下血による貧血症状で病院に入院。検査の結果、胃や腸に重篤な病気は発見されず、退院することができました。10日間の入院で、病院に支払った費用は約15万円。このうち一定金額の払い戻しを受けることができることも病院に教えていただきました。これまで健康保険はあてにならないと思い、民間の保険に入っています。健康保険が意外に充実していることを実感し、公的保険制度を見直しています。

A.

 健康保険のメリットは、保険証1枚あれば、いつでも、どこでも、病院にかかれること。患者はかかった診療報酬の一部を窓口で支払うだけで、医療サービスという現物給付を受けられる仕組みとなっています。ほかにも様々な給付があり、意外に知られていないのが高額療養費制度。医療費の自己負担分に上限を設け、これを超える分を健康保険が給付する制度です。最近では、立替払いをしなくて済む、高額療養費の現物給付化が進んでいます。


◆高額療養費の自己負担限度額

 適用事業所に勤める75歳未満の人は健康保険の被保険者となり、業務外の事由により病気やけがをしたとき、保険医療機関で療養の給付として健康保険の給付が受けられます。自己負担(一部負担金)は3割が原則(小学生以上70歳未満)。たとえば100万円の医療費がかかったとしても、病院の窓口では30万円を支払えば済むことになります。
 ただし、療養が長引くと経済的負担が大きくなります。そこで、1ヵ月の医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、その超えた額をすべて医療保険から償還する仕組みが高額療養費制度。自己負担の上限額は、年齢や所得に応じ3区分されています。70歳未満で所得区分が一般の場合、1ヵ月の負担額の上限は、「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」と定められています。1ヵ月の自己負担が30万円だったとすると、87,430円を超えた212,570円が戻ってくることになるのです。

 なお、ここでいう自己負担分とは、1つのレセプト(診療報酬明細書)についての自己負担額を指しています。つまり、①同一月内の、②同一医療機関の診療であり、③医科・歯科別、④入院・外来別にみた診療であること、が条件です。


◆「限度額適用認定証」と世帯合算・多数該当

 高額療養費を受ける手続きとしては、事前申請(現物給付)の場合と、事後払い戻し申請(現金給付)の2つの選択が可能となっています。あらかじめ入院や外来の自己負担額が高額となることが予想されるときは、「健康保険限度額適用認定申請書」を全国健康保険協会の各支部または健康保険組合へ提出し、「限度額適用認定証」の交付を受けます。この認定証を病院に提出しておけば、支払う時点で自動的に限度額まで抑えられ、限度額を超える額を立て替えたり、後から申請する必要がなくなります。以前は入院だけが対象でしたが、昨年の4月からは通院(外来診療)でも使えるようになりました。
 事前申請を行わなかった場合は、いったん自己負担額の全額を支払い、「高額療養費支給申請書」を提出して現金給付を受けます。
 家族で医療費がかさんだときは、「世帯合算」があり、高額療養費の支給が4回を超えたときは、「多数該当」という制度により、それぞれ低い上限額が設定されるよう配慮がされています。
 健康保険には、病気やけがで働けなくなり、給与がもらえないときに、傷病手当金という現金給付の制度もあります。国民皆保険はいざというときにあてになるのです。

 
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