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労働実務Q&Aこれで解決!

診療報酬

Q.

 製造業を営んでいる中小企業の経営者です。私たちの業界では、現金販売は稀で、掛売りや手形販売が多く、代金回収や資金繰りには頭を痛めています。これに比べ、お医者さんは、公的な医療保険制度が確立されており、診療や薬の代金を取りはぐれることがなく、うらやましい限りです。新聞等によると、今年の4月に診療報酬を見直す時期が迫っているとか。この「診療報酬」こそ、医療保健制度を支えている要といえるのではないでしょうか。

A.

 さすがは、経営者。すばらしい炯眼です。日本のように出来高払いで現物給付が円滑に行われている医療現場を支えているのは、診療報酬という医療費の決め方が統一化され、料金の審査と支払いの仕組みが出来あがっているからにほかなりません。国民すべてが公的な医療保険の加入を義務づけられている「国民皆保険」とともに、均質で高いレベルの医療を、いつでもどこでも受けられる、世界に誇るべき医療制度といっても言い過ぎではないでしょう。


◆診療報酬の決め方

 診療報酬とは、病院や診療所などの医療機関が、保険診療としての医療行為等の対価(技術料・検査費・薬剤費)として受けとる報酬のこと。国が全国一律で定めます。
 診療報酬点数表(医科、歯科、調剤の3種類がある)に基づき、1つひとつの医療行為に点数がつけられ(1点が10円)、点数の合計が医療費の値段となります。これが出来高払いの原則です。
 診療報酬の改定は、2年に1度実施。まず、年間予算のうちいくらを医療費の支払いに充てるかという改定率を内閣が決めます。診療報酬は、患者の窓口負担のほか、税金や企業および個人が負担する保険料で賄われるため、改定率の引き上げは、費用を負担する側にとっては重大な関心事です。
 つぎに、個別の技術料や薬代にどう配分するかを決めなければなりません。これは、病院と診療所、あるいは内科、外科、小児科等各科間の配分争いにもなります。このため、診療報酬点数表は、中央社会保険医療協議会(中医協)で審議し、最終的には厚生労働大臣が告示で示すことになっています。
 中医協は、費用を負担する支払い側、医療界、調整役としての公益委員の三者構成。診療報酬の改定は、医療の質や量を左右し、高齢化する未来を展望するモメント(契機)となっているのです。


◆診療報酬支払いの仕組み

 全国に保険医療機関等の数は約23万ヵ所。協会けんぽや健康保険組合などの保険者も全国に分散しています。それらの1つずつの医療機関が保険者に保険給付額を請求するのは煩雑で堪えられません。
 そこで、健康保険を中心とした被用者保険グループは、社会保険診療報酬支払基金(国民健康保険のグループは国民健康保険団体連合会)という団体に、診療報酬の審査・支払いを包括的に委託しています。全国47都道府県に支部があり、各支部間で、決済が完結するのです。
 
 審査支払機関に対して医療機関が保険からの支払いを請求する書類のことを診療報酬請求明細書(レセプト)と呼んでいます。審査支払機関では、医療機関から請求されたレセプトが適正であるかどうかを審査したうえで、保険者に診療報酬請求を行います。
 このように、診療報酬は、病院、協会けんぽ、健康保険組合等がそれぞれの請求・支払いを個別に行うのではなく、保険者等から審査と支払いを委託されている審査支払機関という公的な機関を通して適正に審査され、支払われているのです。

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