HOME >これで解決!労働実務Q&A>コンプライアンス・人材育成>承認欲求 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

承認欲求

Q.

 最近の若い人たちは、職場で「楽しく、おもしろく働きたい」、仕事を通して「自分が成長し」、「自己実現を図りたい」という内面的価値を重視する傾向が強い、という統計調査結果を見たことがあります。しかし、わが社の内実はというと……。言われたことしかやらない、すぐマニュアルを欲しがる、何を言っても真意が伝わらない等々。総じてやる気が感じられないのです。部下のやる気をいかに引き出せばよいのか、悩んでいます。

A.

 仕事のおもしろさ、やりがい達成感などの内発的動機づけを促す手法は、まちがいではありません。ただし、現実の職場がいつも楽しく、おもしろいものでないのも事実。仕事をおもしろくするためには、若干のトレーニングと経験も必要です。その前に、「誰かに認められたい」という「承認欲求」を充足させる方法が有効です。部下たちも、「自分は精一杯やっているのに、わかってくれない」という鬱憤を抱いているケースが多いからです。


◆「承認」による動機づけの秘めたるパワー

 デール・カーネギーの古典的名著、『人を動かす』によると、人間のもつ最も根強い衝動は、「他人に認められることを渇望する気持」。別名、自己重要感とも呼ばれている欲求こそ、人間を動物から区別している主たる人間の特性に外ならないのです。
 心理学者のマズローは、モチベーション理論の中でしばしば引用される欲求5段階説を提唱しました。人間の欲求は、低次から高次まで、①生理的欲求、②安定の欲求、③愛情・帰属の欲求、④自尊・承認の欲求、⑤自己実現の欲求、の5つの階層を形成。低次の欲求が満たされると、順次、その上の高次の欲求をもつというのです。
 実は、多くの人が、4段階の自尊・承認の欲求の充足が得られないまま、一足飛びに③から⑤への自己実現欲求を望んでいます。しかし、自己実現は、他人の目や評価をとおして実感できるもの。仕事の楽しさ、おもしろさは、承認に支えられています。つまり、自己実現欲求は、承認欲求が満たされていることが大前提です。ここに部下をモチベートするヒントが隠されているのです。
 「承認」による動機づけの効果を、数々のデータにより実証した研究成果も発表されています(大田肇『承認とモチベーション』同文舘出版)。
 漫画家でエッセイストの東海林さだおさんが提唱する「ドーダ学」も、この範疇に入れていいでしょう(『もっとコロッケな日本語を』文春文庫)。
 脳科学の分野からみた考察もあります。やる気は、大脳辺縁系にある「側坐核」が司っています。承認による自信や喜びは、A10神経という快楽に関わる神経を刺激して、ドーパミンという神経伝達物質を出させて、やる気を維持させるというのです。脳に快感を与え、脳を活性化させるのです。


◆部下のやる気に火をつける方法

 人間関係を深めるためのストロークにより部下の行動を変えることができます。ストロークとは、心理学(交流分析)でいう他人を承認する様々な働きかけをいいます。ねぎらう、ほめる、はげます、感謝する、話を聴く、信頼する等の行為を言います。単純ですが、「よくやった!」とか、「お疲れさん」というねぎらいの一言が、相手の心に響くのです。
 組織のインセンティブシステムの活用も、承認欲求を充足させます。たとえば人事評価制度。評価結果は、昇進、昇格、昇給などの社内ステータスを決めます。評価の結果は、能力や貢献度のシンボルであり、社員がこだわりをみせるのは、承認欲求を満たせるからに外なりません。目標管理・面談制度や会社行事であるレクリエーション、社内旅行、運動会、忘年会への出席は、承認欲求を充足させるまたとないチャンスなのです。

ページトップ