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労働実務Q&Aこれで解決!

自分を奮い起たせる技法

Q.

 管理職の地位に就いて約10年。数名の部下を率い、日々、指揮監督と人材育成に勤しんでいます。このコーナーの「やる気を高める方法」や「意識改革の中身」、最近では「承認欲求」などは、部下のモチベーションを高めるための理論と方法がわかりやすく書いてあり、参考になりました。ところで、私ごとですが‥‥‥。仕事がマンネリ化し、凡ミスを繰り返したり、心が萎えるこのごろ。他人ではなく自分自身を鼓舞する方法をご指南下さい。

A.

 管理者は自ら動機づけるすべを身につけていなければなりません。落ち込んでいても誰も助けてはくれず、自らはい上がるしかないのです。私が日常的に接している経営者、とりわけ起業したオーナー経営者は並はずれて強い動機づけをもっています。自らを奮い起たせるテクニックに長けているといってもいいでしょう。彼らの行動特性は、いずれも心理学や脳科学の法則に裏打ちされた、理に適った方法論であり、お見事というしかありません。


◆脳の仕組みと大脳辺縁系のはたらき

 人間の脳は3つの部位に分けられます。内側から、「脳幹」「小脳」、そして「大脳」です。大脳はさらに、「大脳辺縁系」と「大脳新皮質」に分けられます。
 大脳辺縁系は、本能(食欲・性欲)や情動(快感・恐怖)を支配する部分であり、その上部に思考する脳である大脳新皮質が発達しました。これは脳の進化の歴史。思考する脳〔知性〕が情動の脳〔感情〕の上に建て増しされているのです。理性的な判断を下すために感情は不可欠な要素であり、強い影響力をもっています。
 感情を支配する大脳辺縁系(海馬、側坐核、扁桃核などによって構成される)のメカニズムを知り、感情をかしこくコントロールする方法を知らなくてはならないのです。


◆脳を活性化させ自らを動機づける

① 仕事を好きになる
 脳の中で「好き嫌い」を扱うのが「扁桃核」。「この情報がいるかいらないか」の判断は「海馬」がします。扁桃核と海馬は隣り合って緊密な情報交換をしています。好きなものを覚えやすいというのは、「扁桃核を活性化すると海馬も活性化する」から。「好きこそものの上手なれ」には根拠があったのです。好きなことを仕事にするか、そうでなければ、仕事を好きになること。好きになることが上達の秘訣。好きになれば苦もなくできるのです。
② プロ意識を持つ
 海馬の役割は、情報の「ふるい」。わけても生存のために必要な情報かどうかを判断して、生存に必要なものを記憶します。「生存に必要かどうか」がキーワード。勉強でも仕事でも、生活がかかっていると自覚するのが肝心。勉強も仕事もはかどります。生活がかかっていると思うかどうかは、プロとアマを分ける分水嶺。ハングリー精神はタフネスの源なのです。
③ 理屈ぬきの行動
 やる気を生み出すもとが「側坐核」。直径2ミリほどのやる気の発火装置。この神経細胞が活発になるとやる気が出ます。ただし、一定の刺激がないと活動しません。だから、やる気がしないなぁと思っても、実際にやりはじめてみること。やっているうちに側坐核が自己興奮(作業興奮)して集中力が高まり、気分が乗ってきます。まずは一歩を踏み出す。
④ 目標をもつ
 自分に対する報酬があるとやる気が出ます。内発的な達成感もその1つ。達成感がA10神経という快楽に関わる神経を刺激してドーパミンという物質を出させ、やる気を維持します。快楽は脳にとって何よりのごほうび。
⑤ 思いが事を成す
 思うことは現実化する。潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望をもつと、その願望へと実現する方向へ向かわせてくれます。脳は1つのことを決めたがり、言ったことに対し脳が安定化するのです。「言葉は呪い」。だったら、未来に対していいイメージを描きましょう。

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