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労働実務Q&Aこれで解決!

限定正社員の活用

Q.

 改正労契法18条によると、企業は同じ職場で5年を超えて働く契約社員等が希望する場合、無期雇用に切り替えなければなりません。業務や職場はそのままなので、いわば限定された正社員になります。限定正社員については、非正規労働者の雇用の安定、雇用流動化に資する等の意見がある一方、地域限定正社員は解雇がしやすくなる等の懸念も表明されています。今、限定正社員の活用が注目される理由、限定正社員の具体的な内容、企業での導入の方法等を教えてください。

A.

 昨年(平成26年)7月、「『多様な正社員』の普及・拡大のための有識者懇談会報告書」が提出されました。現在の日本の企業は、転勤や残業、配置転換の可能性がある正社員が中心。子育てや親の介護などを抱え、時間や勤務地に制約のある人は、非正規社員として働かざるを得ないのが現状です。報告書は、限定正社員を、正社員と非正規社員の中間にある働き方として位置づけ、その円滑な活用のために使用者が留意すべき事項や方策を提言しています。 


◆限定正社員の活用が求められる理由

 限定正社員あるいは多様な正社員の活用を図るという議論が注目されるワケ。
 その1つは、正社員と非正社員という二極化現象に限界がきているためです。正社員は、雇用が安定し、相対的に高い賃金等の処遇が得られる代わりに、所定外労働をいとわず、残業や勤務地の大幅な変更も甘受しなければなりません。他方、非正社員は、有期雇用契約の反復更新の中で雇止めの不安を抱き、相対的に賃金が低く、賞与も退職金もないのが実態。今後、確実に労働人口が減少していくなかで、女性、高齢者、共働き世帯等を援助、活用し、働き方と処遇の二極化を緩和していく社会的要請があるのです。
 2つ目は、仕事と育児・介護や自己啓発等の生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と、企業による優秀な人材の確保や定着を同時可能とするような、労使双方にとって望ましい多元的な働き方の実現が求められているためです。


◆限定正社員の類型と活用方法

 限定正社員とは、働く地域、仕事の中身、働く時間のいずれかを限定した正社員をいい、報告書では3つの類型を掲げています。
 ① 勤務地限定正社員 正社員は、労働契約上、転勤や出向を命じられることが前提。育児や介護のため転勤が困難な人、地元に定着した就業を希望する人に就業機会を与えることができます。無期転換ルールの受け皿にも。
 ② 職務限定正社員 正社員は、人材育成の観点から様々な職務を経験させるジョブ・ローテーションが基本。高度専門的なキャリア形成が必要な職務や一定の資格が必要な職務については、外部労働市場から能力を期待した即戦力としての採用が可能となるのです。
 ③ 勤務時間限定正社員 長時間残業などの働き方をめぐる問題の多くは、正社員の仕事時間が無限定であることが発端。育児・介護や自己啓発で長時間労働が難しい人たちの定着促進を図ることができます。


◆限定正社員制度の設計・導入・運用

 限定正社員制度の導入の検討にあたっては、自社ニーズについて労使が共通認識をもつことがさしあたって重要となります。
 この際、職務や勤務地を限定したコース別処遇制度の設計なども射程に入れるべきでしょう。 
 限定をめぐる紛争を未然に防止するために、雇用契約書や就業規則に限定内容の明示をすることは必須の条件です。
 賃金・処遇制度については、限定正社員と従来の正社員間において不公平感を抱かせない工夫が必要。そのためには、既得権益を確保することと透明性を高めること。
 転換制度の仕組みをルール化することにより、活用が促進されます。資格や要件を明確に定め、モチベーション維持のため、相互転換や再転換も容認すべきと考えます。
 制度の設計、導入にあたっては、労使双方で、導入手順、推進態勢(プロジェクトチームなど)、移行方法を十分協議することが肝心。スムーズな運用ができるか否かは、社員の納得感を得ることができるかどうかにかかっているからです。

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