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労働実務Q&Aこれで解決!

就業規則の周知義務

Q.

 当社では、常時10人以上の労働者を使用しているため、労基法上、就業規則の作成・届出義務があります。すでに労働者代表の意見書を添付して、所轄労働基準監督署へ届へ出し、受理印もいただいています。就業規則は、内部文書として社外秘扱いなので、イザというとき出せるよう社長である私の机の引き出しに入れています。ある人に、そのような就業規則は無効である、と言われました。本当ですか。

A.

 就業規則は、労働者が必要に応じて中身を確認したり、その内容を調べることができるようにしておかなければなりません。これを「周知」といます。社長の引き出しに格納されていたのでは、労働者がいつでもアクセスできる状態とは言い難く(存在しないと同じです)周知を欠いています。このような就業規則は、法的効力はなく無効です。万一、訴訟沙汰になり、労働者に就業規則の存在を知らなかったと言われても、反論するスベはありません。就業規則は、画餅に帰するのです。 


◆労働基準法に基づく就業規則の周知義務

 使用者は、就業規則の作成・変更に際し、労基法にもとづき労働者に周知させる義務があります。周知の方法も具体的に定めています。
 ①常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備えつけること。②書面を労働者に交付すること。③磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること(労基法106条1項、労基則52条の2)、の3つです。
 ③は、パソコン等の機器上で常時確認できることを想定しています。上記3つのいずれかの方法によれば足り、必ずしも書面の交付による必要はありません。
 周知義務に違反した場合、使用者には、30万円以下の罰金が科せられます(労基法120条1号)。法が定めた方法で労働者が常時確認できる状態に置いておかなければ、実質的に周知を図っていたとしても、本条違反が成立することになります。


◆労働契約法にもとづく就業規則の周知

 就業規則は、判例によって契約内容を規律する効力を認められてきました。2つのパターンがあり、判例法理は、労働契約法7条および10条として結実しています。
 まずは、労働契約の締結における就業規則の労働契約規律効。労働者および使用者が労働契約を締結する場面です。この場合に、①就業規則を労働者に周知させていたことと、②就業規則G合理的内容を定めていること、の2つの要件を充足させると、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による、という法的効果が生じます(労契法7条)。
 つぎに、労働契約の変更における就業規則の労働契約規律効。就業基礎kの変更により労働条件が不利益に変更される場面です。このケースの場合、①変更後の就業規則を労働者に周知させること、②就業規則の変更が合理t系なものであること、という2つの要件を満たしたときに、労働条件は変更後の就業規則の定めることろにより変更されるという法的効果を生じます(労契法10条)。
 以上のような要件の明文化は、法規範としtげ効力を生じるためには、「その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが採られていることを要する」(フジ興産事件最判平15・10・10)とした判例や、有名な秋北バス事件(最判昭43・12・25)の判旨を立法化したものと解されています。
 つまり作成した就業規則が有効と認められるためには、労働者に周知させていることと、合理的な内容である、という2つの条件を満たすことが必要なのです。
 なお、労契法7条、10条にいう「周知」は、労基法、労基則による方法に限られず、実質的周知、すなわち労働者が知ろうと思えば知りうる状態にしておくことで足りると解されています。

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