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労働実務Q&Aこれで解決!

メンタルヘルス対策

Q.

新規事業の中心的メンバーである従業員の1人が、最近の長時間労働と何らかの精神的重圧により、医者に「うつ病」と診断され、現在休職中です。会社は、従業員の身体的な健康だけでなく、メンタルヘルス(心の健康)対策をとる責任があるのでしょうか。

A.

従業員の心の病を見逃すと仕事の能率も低下し、長期休業は企業活動そのもののリスクとなります。電通の過労自殺訴訟では、企業の安全配慮義務違反とされ、巨額の賠償責任が認められています。部下の心の健康管理のための管理職研修など、メンタルヘルス対策をとる必要があります。


◆心の病の増加とメンタルヘルス

 社会経済生産性本部が昨年3月に上場企業を対象に実施した調査で、「心の病は最近の3年間で増加傾向にある」とした企業が48.9%にのぼっています。相次ぐリストラや成果主義の人事・賃金制度の広がりによるストレスがその要因になっているとみられ、なお増加していく可能性があります。企業サイドからはやむを得ないこととはいえ、従業員にとってはルールの変更であり、心の健康を崩す劇的変化の材料となるのです。
 メンタルヘルス対策は、職場の生産性向上や安全確保におけるリスクマネジメントとしての意義をもつだけでなく、業務上の精神障害やそれによる自殺の未然防止につながることが期待できます。 
 どのようなメンタルヘルス対策があるでしょうか。最も多いのは管理職研修で、それに次ぐのが社内か社外に相談窓口を設置すること。休職者の「復職プログラム」をもつ企業もあります。年に1回実施している健康診断に臨床心理士らによる「心のヘルスチェック」を加えた企業もあります。このようなニーズを捉え、心の健康管理を請け負う法人向けサービスも増えているようです。さきの過労自殺訴訟の最高裁判決は、「企業には過労によって社員が心身の健康を損なわないようにすべき義務がある」(最判平12・3・24)との初判断を示し、企業は遺族に1億6800万円の損害賠償を支払っています。損害賠償で億単位の金額を支払うことを考えれば、その何十分の一のコストでメンタルヘルス対策を行う方が企業にとって有効といえるのではないでしょうか。


◆働く人の心の健康づくり

 厚生労働省は平成12年9月8日付で、「事業上における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定し発表しました。その特徴をみてみます。
1. 第一次予防(未然防止)の重視
 健康問題への対策は、第一次予防(未然防止及び健康増進)、第二次予防(早期発見と対処)、第三次予防(リハビリ社会復帰)に区分されますが、その主眼を第一次予防あるいは健康増進においています。
2. 職場環境等へのアプローチ
 心の健康問題の第一次予防には、ストレス要因の除去または低減という原因的側面からみた環境面からのアプローチと、労働者のストレス対処などの個人面からのアプローチがあります。環境と個人の両側面の対応として捉えているのが特徴です。
3. 「心の健康づくり計画」による組織的対策
 指針は、事業者に事業場におけるメンタルヘルスケアの具体的な方法等についての基本的な事項を定めた「心の健康づくり計画」を策定することを求めています。
4. 4つのケアと具体的推進方法
 労働者自身による「セルフケア」、管理監督者による「ラインによるケア」、健康管理担当者による「産業保健スタッフ等によるケア」、事業場外専門家による「事業場外資源によるケア」の協力推進体制をとることを具体的に言及しています。

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