ポイント制退職金
Q. 当社の退職金規程では、退職金額は、「算定基礎額×支給係数」という算定方式となっており、算定基礎額は退職時の基本給です。高度成長時代に大量採用した退職予備軍が控えており、この先退職金負担の急増が確実に予測できます。退職金制度を変更したいのですが、よい方法がありますか。また、制度変更で気をつける点を教えて下さい。 |
A. 基本給連動型の退職金算定方式では、企業負担の急激な増加から免れることはできません。基本給切り離し型には、別テーブル方式、定額方式、ポイント方式などがあり、今、最も注目を集めているポイント方式がおすすめです。新しい制度を導入するにあたって注意しなければならないことは、既得権を侵害しないような措置をとることです。 |
◆迫られる退職金制度改革
基本給にリンクした退職金制度は、賃上げに連動して算定基礎額も引き上げられる仕組みとなっているため、退職金の水準は上昇する傾向をもっています。ましてや基本給そのものが年功給であり、支給率も勤続年数に比例して増額する設計となっているため、社員構成の高齢化に伴って、膨大な退職金原資を準備しなければなりません。しかし現実には、退職金支払準備金が用意されていない企業が大半です。
基本給連動型の退職金制度では、勤続年数と退職時の基本給によって退職金額が決まるため、個人の在職中の功績や貢献度が退職金にあまり反映されません。つまり退職金も年功型となっていることが問題なのです。
長引く不況に加えて、新しい会計基準(退職給付会計)の導入や確定拠出年金法と確定給付企業年金法の制定など、退職金制度改革の必要性はますます高まっています。
◆ポイント制退職金制度とは
ポイント制退職金制度とは、在職中の企業への貢献度に応じて毎年ポイントを付与し、これを累積したものにポイント単価を乗じて退職金額を算定する制度です。1965年にフジテレビが導入したのが始まりといわれています。
ポイント制退職金制度にもいくつかの種類がありますが、最も普及しているのは職能資格制度の資格等級に応じてポイントを付与する形態でしょう。資格等級ポイントを設けることにより、能力や成果が退職金に反映されやすくなり、意味のある退職金格差がつけられます。同じ勤続年数で定年退職した場合にも、資格等級ポイントの高い人と低い人で2倍程度の格差を設定することも可能となるのです。いずれにしても、能力を向上させ企業業績に貢献して資格等級が上がれば退職金も増加するシステムになりますから、社員の士気を向上させ企業を活性化させることができます。またポイント単価を用いるため、定昇やベースアップなどによる基本給の上昇による退職金原資の膨張を回避することができるのです。
退職金規程が整備され退職金が制度化されている場合には、退職金も労基法上の賃金となりますので、退職金の支給要件の一方的な変更は、「労働条件の不利益変更」の問題として紛争となることがあります。したがって、ポイント制に移行する際には、社員の一人ひとりについて旧制度で退職金額を算出してポイント単価で除したものを各人の持ち点とします。こうすることにより、移行時の不利益変更は生じませんし、新たな原資を要することもありません。
新制度の導入にあたっては、業績重視型退職金制度をどういう目的で策定したのか目的を明確化することと、他の人事制度と整合性をもたせる等、トータル人事システムの一環として設計、構築することが重要です。
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