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労働実務Q&Aこれで解決!

不祥事の防止対策

Q.

起業して無我夢中の20年。何とか従業員50人規模の会社に育てあげました。気になるのが有名な大企業の不祥事とそれに続く淘汰です。当社も従業員一人ひとりを掌握するのが困難となり、従業員が不正行為をしたり法に反する行動をとることだけは阻止したいと考えています。具体的な対策をご教示下さい。

A.

法令の遵守あるいは社会規範の尊重というコンプライアンスを根底においた企業づくりをめざすのが経営の王道です。まず企業の使命(ミッション)を核とした経営理念や倫理網領を策定明文化し、社内に徹底させることです。経営トップが率先垂範し組織風土や企業文化として根づかせるのが迂遠のようで最も手堅い方法です。


◆企業不祥事と社内リスク

 最近の企業不祥事の特徴は、経営トップがその情報を十分に把握しないうちに内部告発によってコトが発覚し、後手に回った不手際な企業対応により混乱が拡大し、トップが辞任を迫られるというパターンをたどることです。いずれにしても、店頭からの商品撤収やマスコミの報道により企業のブランドイメージは崩壊し、倒産を含めた危急存亡のときを招いています。経営トップの危機意識の欠如、とりわけ法的ルールに違反することから生ずるリーガルリスクへの理解のなさが根本原因です。
 企業のリーガルリスクは、企業の対外的側面(社外リスク)と、対内的側面(社内リスク)に分けることができます。対内的側面、つまり社内リスクの大半は、人事・労務の法律に関連しています。リストラによる配転・解雇、サービス残業などの残業代未払い、パート労働者への賃金差別、労災職業病、過労死、過労自殺、あるいはセクハラ等々……。これらのリーガルリスクを未然に回避するため法的知識を身につけ、マネジメントできなければ激烈な企業競争に勝ち残ることはできません。


◆企業不祥事の未然防止対策

 まずは経営理念の明確化、成文化に着手すべきです。この会社は社会に対しどのような使命をもっているのか。具体的にどのような貢献をすることにより社会に役立っているのか、創業の精神を思い起こすことです。社会にとって存在価値のない会社は生き残っていくことはできません。社長の思いを結実化した、自社版で手作りの大義名分、行動規範をつくることです。従業員が迷ったときや課題に直面したときに的確な判断ができ、迅速な行動がとれるような行動基準があれば安心です。
 経営理念の明文化ができたら、企業倫理網領またはコンプライアンスプログラムの策定も望ましいところです。アメリカの「連邦量刑ガイドライン」(1991年)や「経団連企業行動憲章」(1996年)などが参考になるでしょう。
 ただ、実践が伴わないお題目だけでは意味がありませんから、経営トップや管理者が率先垂範し、望ましい組織風土や企業文化へと醸成させることが肝要です。
 朝礼やミーティング等において日々徹底させることはもちろん、コンプライアンスマニュアルを題材として社員教育・研修を行うことも効果があります。また就業規則において法令違反に対するペナルティーを明文化したり、人事考課の考課要素の一つとして取り上げる方法もあります。
 予防法務に重点を置いた企業法務部の設置や弁護士、社会保険労務士などの社外ブレーンの活用なども考えてほしいところです。トラブルを早い段階で察知し中止させるために、上司を経由せず直接上層部へ通報する社内通報制度の確立も検討の余地ありです。“組織ぐるみ”とみられないための諸施策づくりが功を奏するのです。

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