HOME >これで解決!労働実務Q&A>いじめ・メンタルヘルス>過労死の労災認定 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

過労死の労災認定

Q.

新聞などの報道によると、2002年度(平成14年度)は過労死の労災認定が過去最多になったとのこと。長引く不況による労働環境の悪化も背景にあるが、労災の認定基準が緩和された影響が大きいのではないかという指摘がありました。具体的にどのように変わったのか教えて下さい。

A.

従来の認定基準は、発症前おおむね1週間の短期的な業務の過重性の判断に重点が置かれていました。新認定基準は、長期間にわたる疲労の蓄積も、業務の過重負荷として考慮することとし、疲労の蓄積にかかる「労働時間の評価の目安」が示されて、わかりやすく明確になりました。


◆過労死による労災認定の状況

 過労死という言葉は、法律用語でも、医学用語でもありません。一般に、長時間労働や劣悪な労働環境、仕事上のストレスなど、「業務」に関連した要素が原因となって、脳・心臓疾患等を引き起こし、死に至るケースを過労死と呼んでいます。
 厚生労働省によると、過労死の労災認定が、2002年度は160件で過去最多。死に至らないまでも、脳や心臓の病気で労災補償の対象と認定された人を合わせると317件を記録。これも過去最多で、前年度比2.2倍に上っています。
 業種別でみると、運輸業が72件、卸・小売業60件、製造業57件。職種別では、管理職が71件で最も多く、続いて運輸・通信従事が62件。営業など事務職57件、システムエンジニアなど専門技術職41件となっています。
 年代別では中高年が高く、50歳代が全体の4割以上の128件、40歳代の90件を加えると、約7割を占めています。性別では、男性が9割以上の301人となっています。


◆脳・心臓疾患の認定基準の改正

   過労死は、労災認定上、「脳血管疾患、虚血性心疾患」という業務上疾病に位置づけられています。「疾病」の場合には「負傷」と異なり、業務によるものかどうかの判断が必ずしも容易ではありません。そこで、斉一行政、公平性の観点から、法令で「業務上疾病の範囲」を明確に定め(労基法75条2項、施行規則35条、別表1の2)、多くの通達がそれを補足しているのです。
 今回、平成12年7月に過重労働による業務災害として認められた2つの最高裁判決がきっかけとなって、認定基準が改正されました。平成13年12月12日に出された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」(基発第1063号)という通達がこれで、労働時間の評価の目安が示されました。すなわち、
1. 発症前1ヵ月間に100時間を超える時間外労働、発症前2ヵ月間ないし6ヵ月間に、1ヵ月あたり80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること。
2. 発症前1ヵ月ないし6ヵ月間に、1ヵ月あたり45時間を超える時間外労働が認められる場合は、時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できること。
3. 発症前1ヵ月ないし6ヵ月間に、1ヵ月あたり45時間以内の時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価できること。以上の3点です。
 今回の認定基準は、恒常的な長時間労働等の負荷が長時間にわたって作用した場合には、「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて著しく憎悪させることがあるという考え方に立っているのです。
 使用者には、労働者の労働時間を把握し、過重な時間外労働を削減する努力が求められているのです。

ページトップ