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労働実務Q&Aこれで解決!

有期労働契約の更新拒否

Q.

人件費の節約、繁閑を伴う業務への柔軟な対応を図るため、一年契約で数名のパートタイマーを雇用しています。最近、売上げも減少し、正社員のみで仕事がこなせるようなので、今後の更新は拒否する意向です。雇止めにあたって留意することがあれば教えて下さい。

A.

期間の定めがあっても、それが反復更新されていると、解雇扱いとなる場合があります。就業規則などで正社員との処遇の違いを明確にし、更新の際には契約書を作成するなど厳格な手続きを実践することにより、解雇ではなく退職扱いとすることができます。


◆有期労働契約の反復更新

 パートタイマーや嘱託など、一定の期間の定めのある契約によって雇用された期間雇用者は、その期間の満了によって契約が終了します。その更新を行うか否かは当事者の自由です。これが民法上の原則であり、たとえ何度かの更新があってもこの原則に変わりはないはずです。
 しかし、数度にわたって雇用契約が反復更新されますと、期間についての約束事は形骸化し、労働実態も常用労働者と変わらなくなってくる場合が出てきます。すると、期間雇用者も雇用継続への期待をもつようになるでしょう。
 そこで判例は、期間雇用であっても、一定の場合に解雇に関する法規制が類推適用されるとしています。大くくりで二類型あります。
 一つは、形式的な更新手続きにより反復更新が行われていることなどから期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っているとして、解雇法理を類推適用するケース(東芝柳町事件最判昭49・7・22)。
 いま一つは、反復更新の実態や雇い入れ当初の黙示の合意などから雇用継続への合理的な期待が認められるとして、解雇法理を類推適用するケース(日立メディコ事件 最判昭61・12・4)。
 実質を判断して、このような二類型については、期間が満了すれば自動的に労働契約が終了する「退職」ではなく、「解雇」になると“法解釈”しようというものです。したがって、労働基準法上の解雇制限(19条)や解雇予告(20条)の適用があり、解雇の理由についても解雇権濫用法理の適用を受けることになります。つまり解雇には、社会通念上相当として是認できる程度の合理的理由が必要となるのです。


◆更新拒否を退職扱いにする方法

 以上のような判例動向を踏まえた企業側の人事管理が求められることになります。
 まず、解雇法理の類推適用がなされないよう、仕事の種類、勤務形態、人事制度、など処遇の違いを明確にし、正社員およびパートタイマー用それぞれの就業規則を作成し、これにもとづいた雇用管理を実施することです。
 また更新の際には、きちんと契約書を作成して、一時性、臨時性であることを明白にし、雇用継続の期待をもたせる言動などをしないことです。更新回数や雇用の通算期間に上限を設けるのもよいやり方です。
 最終更新であることを当事者で再確認する方法もあります。更新にあたり、「今回の更新は最終更新であり、期間の満了により本契約は終了する」という条項を、労働契約書または雇入れ通知書に加えるのです。この場合には、双方の合意にもとづく労働契約の終了ですから解雇法理の適用の余地はありません。このような特約がおすすめです。
 しなやかでたくましい企業体質をつくるために、人件費の流動費化という課題はどこの企業も避けては通れません。経営者も知恵を働かせる必要があるのです。

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