就業規則の機能と内容
Q. 当社は、事業所向けコンピューターソフトの開発を行っており、正社員5名、パートタイマー3名を雇用しています。創業時から、“家族的雰囲気の明るい職場”づくりを志向してきましたが、ここにきて、従業員の始業・終業時間の扱いや服装等のルーズさが目につきはじめました。会社の決まりである就業規則を作った方がよいか迷っています。 |
A. 就業規則を作成する法律上の義務が生ずるのは、パートタイマー等を含めて、「常時10人以上の労働者を使用する使用者」(労基法89条1項)です。しかし、就業規則は、いわば「職場の憲法」。法律上の義務がなくとも、労働条件や職場の規律を定めておけば、トラブルを未然に防止することもでき、会社の経営姿勢を徹底させることもできます。 |
◆就業規則の機能
就業規則を作る目的・役割・機能はいろいろあると思いますが、次のようにまとめることができます。
1つは、賃金や労働時間等の労働条件を明確にすることです。従業員は、労働条件や処遇が明確になることにより、安心して業務に精励することができます。使用者サイドからすれば、労働条件を統一的・画一的に設定することにより、雇用管理を効率よく行うことができます。多数の労働者を“協働”に導くためには、誰もが同一のルールで雇用されているという意識をもってもらうこと、つまり公平性の確保が要請されるのです。
2つめは、職場の秩序・規律を守るという機能です。経営目的を遂行し、事業の存続・発展を図るためにも、企業秩序を維持することは必要不可欠です。その実効性確保のために、管理者には、指示・命令権と、違反者に対するペナルティーとしての制裁を加える権限を付与する必要があります。従業員にとっても、就業規則を遵守しているかぎり、使用者の恣意的運用が排除され、みだりに制裁を受けないというメリットもあるのです。
3つめは、経営に対する姿勢や使命、労務管理に関する基本方針やポリシーを明確にし、浸透させるという機能です。経営理念としての企業のミッションやコンプライアンス(法令遵守)体制を徹底させるために、具体化して就業規則の規定に盛り込むこともできるのです。企業の危機管理対策の一環として、あるいは企業不祥事を未然に防止するためにも、有効な方策と考えられます。
◆就業規則の記載事項
労基法89条は、就業規則に記載すべき事項を定めています。これらのうち、いかなる場合にも必ず記載しなければならない事項を「絶対的必要記載事項」といい、制度として設ける場合に記載されなければならない事項を「相対的必要記載事項」といいます。もちろん、これ以外にも社是のたぐいから、人事考課規程のような人事マニュアルを記載してもかまいません。これらは「任意的記載事項」といいます。
就業規則の絶対的必要記載事項は次のとおりです。1.労働時間関係――始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項。2.賃金関係――賃金の決定・計算の方法、賃金支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給に関する事項。3.退職関係――退職または解雇の事由とその手続に関する事項。
相対的必要記載事項のうち比較的重要なのは退職手当に関する事項。すなわち、適用労働者の範囲、退職手当の決定、計算および支払の方法、支払の時期に関する事項があります。
また、従来は別規則としうるのは賃金規程や退職金規程などに限られていましたが、現在はいかなる事項も別規則に定めることができます。とりわけ、パートタイマー等の非正社員を活用する場合は、別規程で対応すべきでしょう。
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