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労働実務Q&Aこれで解決!

割増賃金の計算

Q.

残業等の割増賃金の計算のもととなる、1時間当たりの単価の算出方法について、おたずねします。当社では従来より、各種手当を除いた基本給を200(1日8時間×25日=200時間)で除し、これに割増率を乗じています。先日、従業員から、残業単価が安すぎるのではないか、とクレームがつきました。正しい計算方法を教えて下さい。

A.

分子となる割増賃金の計算の基礎となる賃金には、基本給だけでなく、ごく一部の手当を除いて、大部分の手当が含まれます。分母については、実際の1ヵ月の所定労働時間数です。週40時間労働制の実施に伴い、分母は200をかなり下回るはずです。結果として、割増賃金の不払いという法違反と、残業コスト増という課題を抱えることになります。


◆割増賃金の支払いが必要な場合

 労働基準法は、使用者が労働者に、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合に、2割5分ないし3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払うべきことを定めています(37条、割増率令)。これらの過重労働は、労働者にとって精神的、肉体的な負荷が高く、使用者に抑制を迫るために、高い報酬の支払い義務を課しているのです。割増賃金の支払いが必要な場合は次の6つで、前半3つが単独、後半3つが重複のケースです。

  1. 時間外労働‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2割5分以上
  2. 休日労働‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3割5分以上
  3. 深夜労働‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2割5分以上
  4. 時間外労働+深夜労働‥‥‥‥‥‥‥5割以上
  5. 休日労働+深夜労働‥‥‥‥‥‥‥‥6割以上
  6. 休日労働+時間外労働‥‥‥‥‥‥‥3割5分以上

 深夜労働(午後10時から午前5時まで)は、特殊な時間帯に労働させる、いわば特殊作業手当として超過勤務手当と合算されます。休日の時間外労働は、あくまで「休日労働」の延長と考えるのです。これらの割増賃金は、法定労働時間(1日8時間、1週40時間労働)、法定休日(4週4日の休日)を超える場合に要求されるものであり、法内超勤はもちろん、法定休日以外の休日に働かせても、割増賃金を支払う必要はありません。


◆割増賃金の算定基礎となる賃金

 1時間当たりの賃金額に割増率(1.25~1.6)を乗ずれば、残業単価は算出されますので、時給や日給の場合、あまり問題となることはありません。要は、月給の場合の「通常の労働時間または労働日の賃金」を求める分子と分母の確定です。
 まず分子について。割増賃金の算定基礎から除外してもよい賃金項目は法定されており、1.家族手当、2.通勤手当(労基法37条4項)、3.別居手当、4.子女教育手当、5.住宅手当、6.臨時に支払われた賃金、7.1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(労基則21条)、の7種類です。
 これらの手当等が除外されるのは、仕事の内容や質と違って、労働者の個人的事情によって割増賃金の額が左右されるのは合理的でないと判断されるか、あるいは計算技術上の困難があるためです。
 7種類の賃金項目は、単なる例示ではなく、制限的列挙と解されています。役付手当や精皆勤手当は除外されていません。また、名称のいかんではなく、その実質により判断されます(昭22・9・13発基17号)。したがって、家族手当、住宅手当という名称であっても、個人的事情を度外視して、一律の額で支給される手当は除外されません。
 分母は、1ヵ月の所定労働時間数です。毎月計算してもかまいませんが、1年間の延べ労働時間数を調べ、それを12で除して、1ヵ月平均の所定労働時間数を算出する方が、1年間の単価が固定していて便利だと思います。言うまでもなく、労働時間の短縮や昇給は、時間単価を増加させます。

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