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年休の繰越し・退職前の一括請求

Q.

当社の就業規則は、有給休暇の上限を20日と規定しています。ところがある従業員から、前年度使用しなかった繰越分があるはず、という指摘を受けました。これを認めるべきですか。また退職予定者が、退職日までに未消化の年休残日数をまとめて請求する事例が続発。引継ぎに支障をきたしますし、生産性を下げる職場慣行は、即刻廃止したいのですが。

A.

未消化の年休について、行政解釈は、翌年度まで繰越せるとしています。したがって、就業規則の規定にかかわらず、認めざるを得ません。退職予定者の一括請求は厄介です。請求を阻止する手段は使用者の時季変更権のみ。しかしこの場合、他の時季に年休を与える可能性が閉ざされているため行使できません。結局、請求どおり与えるほかないのです。


◆年休の付与日数と要件

 年休の取得奨励が叫ばれる一方、少人数でやり繰りしている中小企業にとって、年休は頭の痛い問題です。事実、就業規則に年休の規定を盛ることを拒否できないのか、という相談を経営者から受けたこともあります。
 それはさておき、年休の付与日数と取得要件を確認しておきましょう。年休はまず、「6カ月間継続勤務」したときに、10日の権利が発生します。以後の勤続2年間には、勤続1年を増すごとに、11日、12日と1日ずつ年休日数が増加。勤続2年6カ月を越えた後には、勤続1年ごとに14日、16日、18日と2日ずつ増加し、勤続6年6カ月の時点で最高20日の年休日数に達します。
 ただし、この年休を取得するためには、最初の勤続半年間と、以後は毎年1年間について、「全労働日の8割以上出勤」という要件を満たす必要があります。いずれかの年度にこの要件を満たさないと、翌年度の年休権は発生しません。(労基法39条1項、2項)


◆年休の繰越しと時効

 年休の全部または一部がその年度内に行使されずに残った場合、年休は消滅してしまうのか、それとも翌年度以降に繰越せるのかがはじめの問題です。否定する見解や判例もありましたが、行政解釈は、翌年度までの繰越しを認めています。つまり、年休権も労基法上の権利として2年で時効にかかり(115条)、その結果として、未消化日数は翌年度まで繰越されると解されているのです(昭22.12.15基発501号)。したがって、就業規則に繰越しに関する規定がなくても、法令の方が優先しますので(92条)、繰越しを認めないわけにはいかないのです。
 この場合、時季指定された年休が、今年度分か、それとも繰越し分かが問題となります。年休の時季指定権が従業員にある趣旨からすると、就業規則等に別段の指示がないかぎり、繰越し分から行っていると考えるべきでしょう。


◆退職予定者の年休の一括請求

 つぎに、退職予定者が退職日までに年休の残日数をまとめて請求してきた場合の対応です。労基法は、「事業の正常な運営を妨げる場合」に、使用者の時季変更権を認めています(39条4項)。ただし、時季変更権という以上、他の時季に年休を与える可能性があることが前提。年休日を見込んで先日付けの退職願を出された場合、この可能性はなくなります。つまり、退職予定日をこえて時季変更権を行使できないわけですから、従業員の請求をそのまま認めるほかないのです。
 このような不意打ち的な請求は、使用者サイドからすると極めてアンフェアーな印象を受けます。事務引継ぎの面からも好ましくありませんし、生産性も下がります。権利の濫用(民法1条3項)を主張したいくらいですが、違法とまではいえないようです。結局、日頃から年休取得の促進につとめるか、組織や他人に迷惑をかけないような企業文化、職場風土の醸成に頼るしかないようです。

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