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労働実務Q&Aこれで解決!

職場規範の優先順位

Q.

ずっと営業畑を歩んできた私ですが、このたび人事課長の職位を拝命しました。当社には労働組合があり、会社と労働協約を締結しています。もちろん会社には就業規則があります。個々の社員は会社と労働契約を交わしているはずです。労基法など国の法令を含め、これらの職場に適用される諸規範の効力関係はどのように考えたらいいのでしょうか。

A.

管理・監督職の職制に就く人は、部下に対して関係法令に違反するような業務命令をすることができませんので、職場規範の優先効も熟知しておく必要があります。結論からいいますと、まず国の法令がすべてに優先します。ついで労働協約、就業規則、労働契約という順になります。労働者を保護するために、こうした法的構造になっているのです。


◆労働契約への補充効・規範的効力

  労働条件の内容は、基本的には労働契約によって決定されます。ただし、労基法は、「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による」(13条)と規定しています。
  つまり、労基法は、当事者の意思にかかわらず適用される「強行法規」としての性格を有しており、法律の基準に達しない労働条件を定めた契約は無効だ、としているのです。この規定は、さらに無効となって空白となった部分が、労基法の定める基準によって“補充”されるとしたところに意味があります。契約全体を無効としたり、契約の一部を空白にしてしまうと、それまで築かれてきた法律関係が複雑となり、労働者保護に欠ける結果となるため、労基法による「補充的効力」を認めているのです。
  以上は、労基法と労働契約との優先的効力関係です。就業規則と労働契約についても、同様の趣旨、スタイルの規定が93条にあります。ここでは、就業規則に定める基準を下回る労働契約を無効とするとともに、無効となった部分は就業規則によって補充されることにしています。そうしないと、労働条件を画一的・統一的に規制することによって労働者を公平に保護しようとした就業規則本来の目的を損なってしまうからです。
  労働協約と労働契約との関係については、労働組合法16条が同じような規定を置いています。これは労働協約の「規範的効力」と呼ばれているものです。つまり、労働契約の内容が労働協約の内容よりも労働者にとって有利であるかどうかということに関係なく、労働協約が優先するのです。先の就業規則と労働契約の場合は、就業規則以上の内容を定める労働契約までは禁止しておらず、拘束・規律の度合いが若干異なっています。


◆法令・労働協約・就業規則の優先効

  法令・労働協約と就業規則との効力関係について労基法は、「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。行政官庁は、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる」(92条)と規定しています。
  この条文は、労使の自主決定による労働協約が使用者の一方的作成・変更にかかる就業規則より優先することを確認し、労働協約の規範的効力の維持を図った規定といえるでしょう。
  ここでいう「法令」とは、国会の議決により制定される法律、内閣や省庁が制定する政令や省令はもちろんのこと、自治体の条例なども含まれます。
  法令と労働協約の関係については言及していませんが、法令がなにより最優先するのは法治国家として当然のことです(あえて根拠をしめせば民法90条)。
  したがって、優先順位は、①法令、②労働協約、③就業規則、④労働契約という順序になります。

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