選考基準等の開示請求
Q. この4月から個人情報保護法が完全実施されます。同法によると、個人情報取扱事業者が、本人から、保有個人データの開示請求をされたときは、遅滞なく開示しなければならないとのこと。当社ではかねてより、不採用となった人からの選考基準や成績の問い合わせに対し、非開示としてきました。この取扱いを続けることは法的に問題がありますか。 |
A. 法律は、例外として、非開示事由も列挙しており、本件では、その「業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合」に該当すると考えます。個人情報保護法は、あらゆる業界を対象とした抽象的表現にとどまっており、主務大臣が所管する業界に特化した「ガイドライン」や「指針」で補足し、法解釈や対応を考えていくべきでしょう。 |
◆原則開示と非開示理由
採用から雇用管理、退職に至るまでの企業の人事情報は、履歴・所得・健康・評価など、デリケートで秘匿性の強い個人情報を含んでいます。しかし、個人情報保護法は、労働者に関わる個人情報を適用除外または別扱いにしておらず、法の全面施行後は、開示に応ずることが原則となります。
◆非開示の実質的・形式的根拠
企業は、どのような資質を持っている人間を採用し、それをどのような基準で選択するか、という採用の自由をもっています。採用選考は、まさに企業の盛衰を左右する最重要事項であり、経営者の判断に委ねられるべきものです。競争が激化している今日では、付加価値をつくり出していく創造性豊かなプロとなりうる人材を見抜かなくてはならない緊張感のあるフェーズ。したがって、企業は当初より開示を想定しておらず、どちらかというと公開にもなじまないものです。一旦採用すれば解雇することが困難な日本の長期雇用システムのもとでは、一層慎重かつ厳密に行わざるを得ません。また、繰り返しもしくは大量の開示請求は、業務を停滞させます。つまり情報開示は、適切な評価、判断を妨げ、採用業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあるのです。
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