評価者研修
Q. 会社への貢献度を重視した成果主義の賃金・人事制度を導入して3年経過し、会社は増収増益を続けています。導入直後に評価者研修を実施したものの、その後は行っていません。評価者研修は、ある程度定期的に行った方がよいのでしょうか。ビデオ等の研修教材が当社の実態とかけ離れており、評価者研修をどのようにすすめていったらよいか苦慮しています。 |
A. 評価する管理者に対し、部下への要求水準の統一を図ることを目的に実施するのが評価者研修です。人事評価制度の公平さを担保するために欠くことのできない研修ですから、定期的に実施するのがよいでしょう。いかに精緻な評価ツールがあったとしても、それを運用するのはあくまでヒトですから。研修は、自社版・ケース・スタディがおすすめです。 |
◆評価者研修の目的
評価者研修の目的やねらいはいろいろありますが、次の3つに集約できます。
第1は、自社の新しい人事制度の目的は何であったのか、原点に帰ってよく理解してもらうことです。なぜ人事制度改革が必要であったのか、会社のめざすべき方向性を確認し、経営理念や行動指針の真髄を学びます。業績向上に直結しない制度改革はおよそナンセンスなことです。人事制度が自己目的化することのないよう戒めなければなりません。
第2に、評価者が同じ「目線」をもてるよう、部下への要求水準の統一を図ります。たとえば、評価尺度がA・B・C・D・Eの5段階ある場合の「C」評価を揃えることです。評価者間の評価のバラツキを少なくすることが、研修の眼目です。評価の運用ルールで重要なポイントとなるのは、人事評価の基本手順(①行動の選択、②要素の選択、③段階の選択)と評価者が陥りやすいエラーとその防止対策を習得することです。
第3は、評価者である管理・監督者自身のマネジメント能力の涵養です。適正な評価の前提となるのは評価する者の“恣意性”の排除にあります。被評価者に対する好意、同情、偏見または思惑に左右されることなく「公平無私」の態度が求められるのです。部下から信頼され、評価結果を納得して受け入れてもらうためには、上司自らの人格・識見を磨かねばならないということです。評価テクニックより、まずは人間性の陶冶です。その意味で、評価者研修は管理者自身の能力開発そのものに外ならないのです。
◆自社版・ケース・スタディ
評価者研修では、「新人事制度ガイドブック」「人事評価制度の手引き」「人事制度の運用ツール」などのマニュアル類をつかって、人事評価の考え方、仕組み、実施方法など、人事評価の基礎を学習します。
自社版・ケース・スタディは次のような手順ですすめます。
まずは「人事評価研修用チェックシート」の作成です。横軸に、「業績」「能力」「意欲・態度」そして「職種」「グレード」ごとに職場の全評価要素を網羅します。スペースがあれば「評価の着眼点」の項目もつくります。縦軸には、「業務遂行の事例」として10項目程度を空欄とします。これで評価要素と事例のマトリックスが出来あがりです。
つぎは、各管理者に事例を1つずつ出してもらい、意見を述べさせます。日常の出来事のなかから、部下を指導したり、悩んだり、困ったこと等からエピソードを拾い出してもらうのです。そしてその一事例を文章化し、シートのどの要素で評価し、どのレベルに該当するのか「評定」して、マスに評点を書いて発表させます。
これを全体またはグループで討議し、当社での最終判定を下します。最初は少ない事例ですが、これをストックしてデータベース化することにより、わが社の「判例集」ができます。実情に即した手作りの研修が、人事評価制度定着への早道です。
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