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賞与の査定と年休取得

Q.

当社の従業員の年休消化率は人によって様々。よくとる人、そうでない人、とりたくてもとりにくい部署にいる人、に分布しているようです。給与規程は、賞与算定期間における「従業員の勤務成績」を勘案できることになっています。そこで、賞与の査定にあたり、年休をとらなかった者を何らかの形で優遇しようと考えています。何か問題がありますか。

A.

年休取得のバラツキについての不公平感を払拭したいという経営者としての心情はよく理解できます。しかし、このような取扱いは、年休取得者に対する不利益扱いの禁止を定めた労基法附則136条に真っ向から抵触します。年休取得を査定の要素として一方を優遇することは、他方で年休取得を抑制することになるからです。この件は断念してください。


◆賞与の法的性質

  賞与は、通常、夏と冬のボーナスとして支給されます。就業規則には、「会社の営業成績を勘案して支給する」旨の簡単な規定が設けられるのが通例でしょう。また、「会社の業績の著しい低下」等の場合には支給しないことがある、と定められることもあります。
  経済的観点からは、賃金後払い的性格や成果配分的性格を併有していることは間違いないところです。そこから、生活保障部分としての基本賞与(一律係数)と、会社への貢献度を査定した成果賞与(評価係数)の二階建構成とする支給方法も普及してきました。
  賞与の法的意義はどう考えるべきでしょうか。行政解釈では、「定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」をいい、「定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称の如何にかかわらず」賞与とはみなされない(昭22.9.13 発基17号)とされています。
  つまり、賞与は毎月決まって支給される賃金とは異なり、必ず支給しなければならないものではありません。支給対象者、支給基準、支給日等は、原則として使用者の裁量に委ねられているのです。したがって、「欠勤、遅刻、早退」等の勤怠情報や「業績、能力、意欲・態度」等の評価要素を、会社への貢献度を衡量する尺度として賞与の査定基準にすることは何ら問題がないのです。


◆年休取得と不利益取扱い

  しかし、年次有給休暇となると別問題です。労基法の定める年休権は、6ヵ月継続勤務し全労働日の8割以上を出勤することによって当然に発生します。その法的効果として、年休取得日を就労したものとして取扱い、使用者に一定額の賃金支払い義務を課しています(39条参照)。したがって、賞与であれ、年休日を欠勤もしくはそれに準じたものとして扱うことは年休制度の趣旨に反するのです。
  労基法附則136条は、「使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と定めて、不利益取扱いを禁止し、改めてその趣旨を徹底したのです。
  行政解釈も、「精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならない」(昭63.1.1基発1号)としています。
  労基法附則136条には罰則がついておらず、訓示的な規定と考えられており、これに違反しても即無効とはなりません。但し、判例は、不利益取扱の効力を民法90条の公序良俗違反の有無に照らして判断するという法的手法により無効とする場合があります(最判平5.6.25)。

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