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労働実務Q&Aこれで解決!

継続雇用制度の導入

Q.

当社は貨物自動車運送業を営んでおり、従業員は20人です。定年は、就業規則により60歳と規定。このたび法律の改正により、平成18年4月から、65歳までの雇用確保措置が企業に義務づけられるとのこと。事業の性質からいっても、定年年齢を一律に引き上げることはとても困難です。期限までに準備すべきことを教えてください。

A.

平成16年6月、高年齢者雇用安定法が改正されました。定年延長等を採用できない企業では、少なくとも継続雇用制度の導入を選択し、実施義務のスケジュールに合わせて制度の見直しを迫られることになります。この場合、一定の手順を踏めば、制度の対象者を選定する基準を設けることを認めており、労使間でよく話し合うことが肝心です。


◆選定基準を設ける場合の手続き

  改正高年齢者雇用安定法は、65歳までの安定した雇用確保措置として、定年年齢の引き上げ(定年制廃止を含む)か、継続雇用制度の導入か、のいずれかの措置を講ずることを企業に義務づけました。対象年齢は段階的に引き上げられ、当面の平成18年4月の時点では、62歳が義務づけられます。
  一律定年年齢の引き上げが困難であれば、継続雇用制度の選択しかありません。継続雇用制度とは、再雇用制度もしくは勤務延長制度のこと。現に雇用している高齢者が希望するときは、定年後も引き続き雇用する制度です。希望者全員を雇用することが望ましいのですが、改正法は、企業の実情を考慮し、一定の手続きを踏まえた上で、制度の対象者を自主的に選定する基準を設けることを認めているのです。
  その方法は、まず労使間での書面協定の締結。つまり、継続雇用制度の対象となる労働者の基準を労使協定で定めることにより、その基準に該当する者だけを継続雇用制度の対象とすることができるのです。
  しかも、労使の「協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わないとき」は、就業規則でその基準を定めることも認めています。ただし、これは経過措置(中小企業は5年間、大企業は3年間)なので、注意が必要です。
  いずれにしても、再雇用制度にするか、勤務延長制度なのか、あるいは併用か、導入する制度設計についてよく検討し、労使間で話し合う努力をすることが求められています。 


◆選定基準策定の留意点

  継続雇用制度の対象者の選定基準の中身については、各企業の実情に応じ労使の判断に委ねられます。自社に合った基準でよいのです。ただし、法改正の趣旨から、労働者の意欲や能力について客観的、具体的に設定することが望ましく、厚生労働省は通達を定めています(改正高年齢者雇用安定法Q&A)。
  たとえば、「会社が必要と認めた者に限る」とか「上司の推薦がある者に限る」というケースは、基準が抽象的で、法改正の趣旨に反するおそれがあるとしています。
  一方、「社内技能検定Aレベル」あるいは「過去3年間の勤務評定がC以上(平均以上)の者」等の基準は、具体性、客観性の要件を備えているとしています。


◆60歳定年による退職の効力

  継続雇用制度を導入していない60歳定年制の企業が、平成18年4月1日以降に、定年を理由として60歳で退職させたときの法的効力はどうなるのか。退職は無効とならないと解されています。理由は、法規が公法上の義務規定であり、私人間の権利義務を発生させるものではないから。改正法は、事業主に定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の義務を課すもので、個別の労働者の65歳までの雇用義務を生じさせるものではないのです。

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