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労働実務Q&Aこれで解決!

やる気を高める方法

Q.

創業者である父が病に倒れたため、役付経験もない息子の私が急きょ約60名の従業員を雇用する中小企業の社長に就任することになりました。人事評価などの人事制度もなく賃金水準も高くはありません。組織の活性化に不可欠な従業員のやる気を高めるコツがありましたら伝授ください。また賃金制度は昇給や歩合を充実させるべきでしょうか。

A.

今でも、経営者のなかには、「やる気はお金だ」と信じている人が多いようです。しかし、昇給や歩合などの報酬のアップは、あまりやる気を上げる要因とはなっていないのが実状です。仕事のおもしろさ、やりがい、達成感などのような人間の内面にある内発的モチベーションを促す方が、高いやる気を長い間維持することがわかっています。


◆内発的モチベーションを促す

  従業員の内面から意欲をかきたてるためのスキルとそのメカニズムを紹介しましょう。
  その1は、人間関係を深めるためのストローク。ストロークとは心理学(交流分析)でいう他人を承認する様々な働きかけのこと。従業員を心から信頼し、ねぎらい、思いやることです。ほめる、感謝する、話を聴く、期待する等も含まれます。マズローの欲求5段階説の第4ステージである自尊と承認の欲求を充足させることです。
  その結果、相手方に自信や達成感が生じ、自己重要感(他人と比較して優越者でありたいという欲求)も満たされます。経営者へのロイヤリティ(忠誠心)や自己実現欲求も育くまれていくことでしょう。脳科学的見地からみても、ドーパミンという快楽物質が脳を刺激。「快」感は、脳にとっても何よりのご褒美なのです。「よくやった!」や「お疲れさん」のねぎらいの言葉かけが、人の心をスイッチ・オンさせるのです。
  その2は、指示や強制ではなく、自ら気づくようにしむけること。気づきは、行動への強い原動力になります。人間は確信を持てないと行動には移せないもの。とりわけ自立型人間は、自分で決めたことに拘束されます。
  したがって、仕事上の困難や障害を克服する過程等において、気づきの場面や機会をどれだけ用意してあげられるかどうかということが、指導力発揮のポイントとなってきます。
  その3は、組織の構成員に意味を与えること。「人はパンのみに生くるものにあらず」。人間は意味を求めて生きる動物です。意味があるということが人間に生きる力を与える。
  ですから仕事の指示をするときでも、「何をやるか」だけでなく、「なぜやるか」を説明することが大事です。今の仕事が好きで、自分に向いているという「適職」感が高いモチベータ要因であることがわかっています。
  若い人には、仕事の存在理由やおもしろさを教えてあげて下さい。


◆組織のインセンティブシステム

  経営目的を達するためには、組織の協働へと行動を導くインセンティブシステムの整備が欠かせません。内発的な動機づけを誘因する仕組みを構築することです。
  先のストロークや承認に対応する機能をもつのが人事評価制度。評価結果は、賃金、昇格、職位、権限などの社内ステータスを決めます。納得性の高い評価は本人に自信と誇りを与え、更なる発奮材料にもなるでしょう。
  チャレンジを奨励し気づきを高める技法が目標管理制度。目標を紙に書くと思考が整理され、気づき能力も高まります。気づきによる創意工夫や行動の改善が目標実現を加速するのです。
 従業員に意味を与えるツールが経営理念。共感できる価値観は従業員に働きがいや生きがいを提供し、組織の一体感を強めベクトルを揃えます。ビジョンやミッション(使命)を明確にして、組織に命を吹きこむのが経営トップの最も重要な役割です。

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