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労働実務Q&Aこれで解決!

労働審判制度

Q.

労働組合の上部団体で事務局を担当しています。最近では、非組合員を含め、ストライキ等の集団的労使紛争ではなく、解雇や賃金不払い等の会社と労働者個人の間で生じたトラブルの相談が増えています。ただ裁判を起こすとなると、期間も長くかかり、労働者側の負担も大変。労働審判制度の創設は、期待をもって見守っていますが、その概要を教えてください。

A.

この4月から、個別労働関係紛争を解決するために、全国の地方裁判所で労働審判制度がスタートしました。この制度は、労働関係の専門家が加わった労働審判委員会が、双方の言い分や証拠をもとに審理し、トラブルの実情に合った解決案を示す手続です。短期間に、柔軟で実効的な解決を図る、労使いずれもメリットのある紛争解決制度といえそうです。


◆労働審判制度の特色

  労働審判制度は、迅速かつ専門的で、事案に即した柔軟な紛争解決を目的としています(労働審判法1条)。
  ① 3回以内の期日で決着する迅速な手続
  審理は原則として「3回以内の期日」で終結(15条2項)。第1回期日から、争点や証拠の整理を行ったうえで、可能な証拠調べを実施し、2回期日では、主張立証を基本的に終了。通常訴訟では1年以上かかることはざらですが、3~4カ月で結論が出ます。書面は申立書と答弁書のみ。期日での口頭による丁々発止の論戦が期待されます。
  ② 労働関係の専門的実務経験者が関与
  労働審判制度の運営主体は、裁判官である労働審判官1名と、「労働関係に関する専門的な知識経験を有する者」から任命される労働審判員2名で構成される「労働審判委員会」(7条~9条)。労働現場や慣行を熟知したスペシャリストを関与させることにより、専門性と信頼性を高めるねらいがあるのです。
  当然、労働審判員は、労使それぞれの代弁者としてではなく、中立かつ公正な立場で職務を行います。
  ③ 事案の実情に即した柔軟な紛争解決
  話し合いによる解決の見込があれば、随時調停が試みられます。調停に至らない場合は、「労働審判手続の経過を踏まえて」、すなわち当事者の意向を推認して、事案の実情に即した労働審判が行われます(1条、20条1項)。たとえば、解雇が無効であったとしても、総合的な事情を勘案して、原職復帰とせず(オール・オア・ナッシングにしない)、金銭補償で解決することもあり得るのです。当事者双方の実益を優先します。


◆労働紛争の実効的解決

  労働審判制度は、個別労働紛争に特化した司法上の紛争解決制度。裁判という国の装置を背景とした実効性の確保が最大の魅力です。行政上の紛争解決制度である都道府県労働局(紛争調整委員会)におけるあっせん手続と比較してみましょう。
  まずは、当事者や関係人の出頭確保の仕組みの有無。あっせん手続では、当事者は参加を強制されないため、拒否すればあっせんは打ち切り。労働審判手続きは、過料の制裁付きで出頭を誘導します(31条)。
  つぎに、あっせん手続は、当事者の自主的紛争解決の促進を目的としているため、判定は行いません。労働審判手続は、権利義務関係に基づく判定作用が組み込まれています。
 加えて、訴訟との連携。労働審判手続は、当事者が審判に異議ある場合等に、通常訴訟への移行を予定。より強制力のある判定作用が後に控えています。簡便性を選択して審判で終了する可能性は大です(21条3項、23条1項)。労働審判に異議がない場合には、審判は裁判上の和解と同一の効力を有します(21条4項)。つまり強制執行ができる。あっせんによる和解は執行力がないので、解決結果そのものの効力の差は歴然としています。

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