HOME >これで解決!労働実務Q&A>労働時間・休日・休暇>裁量労働制 サイトマップ
労働実務Q&Aこれで解決!

裁量労働制

Q.

当社では、労働時間規制の適用除外者である管理者は年俸制となっています。さらに、専門職・事務職・販売職等のホワイトカラー層についても、生産性を高めるために年俸制の採用を検討中です。そこで、労働時間の長さと報酬額のリンクを切断できる裁量労働制を同時に導入したいのですが、留意すべきことがありましたらご教示ください。

A.

年俸制などの成果主義賃金制度においては、時間外労働に比例した割増賃金の支払いを求める現行の労働時間規制は大きな壁。これを部分的に緩和している裁量労働制は、年俸制になじむ制度といえます、ただし、適用除外とは異なり、労働時間のみなし制。また業務も限定されており、導入と運用の要件も厳格で、全てのホワイトカラーへの適用は無理です。


◆みなし労働時間制

  裁量労働制について労基法は、「専門業務型裁量労働制」(38条の3)と「企画業務型裁量労働制」(38条の4)の2つを規定しています。両方とも、みなし時間制の一種です。つまり、仕事のやり方に関して裁量が認められている一定の業務については、実労働時間の算定によらず、協定等であらかじめ定めた時間を労働したものとみなしてしまうという制度です。
  現行法制の枠組みの中で、労働時間と賃金をダイレクトに連動させない方法をとったのです。したがって、時間外・休日労働、深夜労働および割増賃金(36条、37条)の適用が免れるわけではありません。


◆裁量労働制の要件

  ① 専門業務型裁量労働制
  対象となる業務は、主として、研究開発、システムエンジニア、取材・編集、プロデューサー、ディレクター、デザイナー等です。これらの業務は限定列挙であり、法令で認められた業務に限られています。
  手続としては、事業場の労使協定において、制度の対象となる業務、対象となる業務遂行の手段や方法に関し労働者に指示をしないこと、労働時間としてみなす時間、協定の有効期間等を定めなければなりません。また、労使協定は労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
  ② 企画業務型裁量労働制
  これは、企業の中枢部門において経営・管理に関与するホワイトカラーのための制度。すなわち、本社または本社に類する部門の事業場において、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査および分析の業務に、これをこなせる知識、経験を有する労働者が就く場合に採用できる制度です。つまり、前提要件として、事業場、対象業務、労働者の3つの点で絞りがかけられています。具体的には、厚生労働大臣が定める指針(平11.12.27労告149号)に例が示されています。
  手続的要件としては、事業場に「労使委員会」が設置され、そこで決議されることが必要。設置や決議は労働基準監督署長への届け出を要します。決議では、対象業務、対象労働者の範囲、みなし労働時間のほか、本人の同意要件や不同意の場合の不利益取扱禁止などの事項を定めることが義務づけられています。


◆裁量労働制の課題

  厳格な手続的規制は、労働者の働きすぎの防止を目的としています。先の指針は、裁量労働制をとる労働者についても、使用者は健康配慮義務を負うとしています。
  ただ、厳しい要件が利用率を低くしていることも事実。使いやすいように見直していくべきでしょう。同時に、労働時間規制の適用除外者を範囲を明確にして拡大し、仕事ぶりを公正・公平に評価できる人事評価制度の確立が不可欠です。

ページトップ