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労働実務Q&Aこれで解決!

人事評価制度の見直し

Q.

人事評価制度を導入して5年が経過。当時の年功給に訣別し、働きに応じた賃金処遇を実現させるために、成績評価の客観的基準づくりに腐心したものです。今では、従業員の賃金・賞与の額に相当の格差がついています。ただし、経営的観点からみて、人事評価がうまく機能しているかどうかについては、一抹の不安があります。見直しの方向性を示して下さい。

A.

人事評価制度は、賃金や賞与の査定をすることだけが目的ではありません。その人事情報を公正な処遇や能力開発、やる気の醸成、適正配置などに広く活用して、経営に役立てることにあります。最近では、組織の方針を徹底させ、個々人に期待する行動を導くコミュニケーションツールとしても注目されています。経営サポート機能こそが肝心なのです。


◆人事評価は査定することが目的ではない

  人事評価制度とは、従業員一人ひとりをどのうような基準で評価し、その結果をどの程度、何に活用するかを明らかにしたルール。査定をして格差をつけること自体が目的ではないのです。企業によって濃淡はあるでしょうが、昇進、昇給、昇格などの公正な処遇への反映、期待する人材の育成、士気の高揚と組織の活性化、適材適所の配置・異動など、その活用法に意味があるのです。
  否、人事評価を含めたあらゆる人事制度は手段であり、目的ではないといったほうがいいでしょう。目的は経営課題を遂行することであり、組織の存続・発展に収斂されるはずです。つまり、業績向上に直結しない人事制度など、およそナンセンスなこと。
  したがって、人事評価制度の運用、作動、定着そのものを議論することよりも、企業の売上げ、利益、付加価値生産性などのパフォーマンスを高めることに貢献できたかどうか、が問われなければならないのです。


◆なぜ人事評価がうまく機能しないのか

① 会社のメッセージが明確に伝わっていない
  人事評価のフォーマットを一覧すると、通常、会社が期待する人材像が見えてきます。評価項目や評価基準は、企業が求める人材価値(バリュー)と密接に結びついているはずだからです。もしそうでないとすれば、会社のメッセージがよく伝わっていないことになります。業績や成果を重視し、たとえ精緻で客観的な基準ができたとしても、それでは機能不全といわざるを得ません。
  人事評価制度は、会社が業績を上げるためには何が重要で、常日頃、従業員にどのような行動をとってほしいのかを指し示すツールです。経営理念のさらなる明確化と具体化、成果につながる行動特性(コンピテンシー)の分析と研究、的確な表現方法の工夫等が検討課題となります。
② 経営に必要な人材育成につながっていない
  自社のビジョンや経営戦略を遂行できる人材は、自前で育成していくのが鉄則。人事評価により従業員一人ひとりの仕事ぶりを把握し、達成水準との不足度を測定し、OJTや研修につなげていきます。
  とりわけ、職務や等級ごとに、職務要件、能力要件、意欲・態度要件を明示した詳細な職務基準書が有効です。従業員自らの職務行動や能力と会社が求める要件とのギャップに、“気づき”を与えることができるから。こうして、評価と人材育成を連動させます。
③ 評価者研修が行われていない
  人事評価制度を実施している企業でも、評価者研修を定期的に行っているところは意外と少ないようです。しかし、部下の不満の多くは、評価者の公正な評価能力への不信にあります。バラツキをなくし、部下への要求水準の統一を図るための評価者研修を定例化すべきです。また、評価者研修を行っていることを従業員にアナウンスすることにより、制度への信頼性と評価者への信頼感を高めることができるのではないでしょうか。

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